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〒856-0805 長崎県大村市竹松本町840番地9号2F

第4章 4-6 子どもに負動産を残さないために50代から何をするか?

50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

 

始めに結論

子どもに不(負)動産を引き継がせたくない場合、50代から必要なのは「遺言書を書いて終わり」ではありません。現所有者の名義と債務、売却可能性、管理負担、子どもの利用意思を確認し、「生前に整理する不動産」と「当面は保有する不動産」を分けてください。不動産を生前に売れば、残るのは現金等の財産であり、子どもに何も相続させないという意味ではありません。法的な相続・遺言判断は司法書士や弁護士、税金は税理士、不動産の売却可能性は宅建業者へ分けて相談します。

 

 

「家を残せば喜ばれる」とは限らない

自宅や実家が資産であることと、子どもがその家を必要としていることは別です。県外に生活拠点を持ち、仕事・家庭・通院の事情で戻る予定のない子どもへ、維持費のかかる住宅を引き継がせると、草木管理、固定資産税、火災保険、家財整理、境界確認や売却手続が負担になる場合があります。残す前に「住む予定」「保有して管理する意思」「売却を希望するか」を聞きます。

仮に「子どもに家を残さない」と決めても、所有権は親自身にあります。生前に売るか、住み続けるか、遺言で誰へ承継させるかなど複数の方針は法的効果が異なります。「売らなければ子どもが相続放棄すればよい」と短絡しないことが重要です。相続放棄には個別の手続・期限・他の相続財産との関係があり、家だけを自由に除外できる制度ではありません。

 

 

最初に確認する5条件|先送りする損失を計算する

判断条件

確認する内容

最大損失額

残債不足・売却費用・改修・管理費・税務の負担を見積もる。取引価格・課税額が未知なら最大値は確定しない。

成功条件

現在の生活を守りながら不動産の承継方針を明確にし、相続人の負担と対立の可能性を減らす。

失敗条件

名義や抵当権を放置、売却見込みと子どもの希望を確認せず、管理する人のない不動産が残る。

損切り基準

売却で残債を完済できない、共有者の意思が不明、税務と法的要件を確認していない場合は契約を保留。

実行しない選択肢

当面保有して管理者と費用負担を決める、価格調査のみ行う、遺言や資産目録だけ先に整える。

 

 

「売却」「贈与」「遺言」は同じ資産整理ではない

方法

生前の所有権

注意すべき問題

生前売却

通常は買主に移転

売却額・費用・ローン抹消・譲渡所得課税・転居先

生前贈与

受贈者へ移転する設計

贈与税、登記費用、受贈者の同意、将来の管理

遺言

原則として死亡時に承継先を指定

形式、有効性、遺留分、他の相続人との調整

保有継続

現所有者のまま

維持管理、老後の居住、将来相続が発生した場合の整理

 

売却は不動産を市場へ移す取引であり、遺言は財産の承継先を法的に指定する意思表示です。遺言が存在しても所有権が死亡前に買主へ移るわけではありません。法務省「自筆証書遺言書保管制度」では、保管制度が自筆証書遺言の方式面を確認する一方、遺言内容の有効性を保証せず、内容の法律相談にも応じない旨を明示しています。遺言の内容を専門家に確認する必要があります。

また、被相続人名義の不動産が残った場合には、法務省「相続登記の申請義務化」の対象になり得ます。2024年4月から、原則として相続で取得したことを知った日等から3年以内の申請義務が定められています。法令上の起算点や経過措置は個別の相続時期・認識により確認してください。

 

 

「売ればいい」と思うなら、最初に残債と手取りを計算する

生前売却を検討する順序は、①登記上の名義と共有者、②住宅ローン・抵当権、③現在の利用者、④建物や土地の状態、⑤実勢価格、⑥売却費用・税務、⑦売却後の本人の住まいです。高値で売れると思っていても、買主が現れるまでの期間や測量・解体・家財整理等に費用が必要になる場合があります。

陸自不動産の既存記事「相続不動産を売却する前の最終チェック」では、土地建物名義・共有者・鍵・家財・抵当権などを実務上の順番で整理しています。「相続した不動産は、すぐ売却できる?」は、相談開始と実際に登記を移転できる段階を分けています。生前の整理でも、名義と権限を先に確認する考え方は共通です。

 

 

架空試算|保有を5年先送りした場合の現金負担

以下は家族の実例や地域相場ではなく、現金負担の構造を示す仮定です。所有住宅を使っていない場合、固定資産税・保険・基本管理費が年24万円、庭木・設備等の追加負担が5年間で90万円と仮定します。売却価格や値上がり・値下がりは予測しません。

期間

通常費用

追加負担

累計現金支出

1年

24万円

0円

24万円

3年

72万円

0円

72万円

5年

120万円

90万円

210万円

 

5年待つだけで210万円の支出となる例ですが、その間に居住利用の価値がある場合は単純な損失とはいえません。売却するにも仲介手数料、測量・家財整理等の実費と課税の可能性があります。早く売れば必ず得とは断定できません。「いつまで誰が使うか」「誰が管理するか」「費用を負担できるか」が判断材料です。

 

 

私の経験から

子どもに負担を残さない資産整理

不動産は売却を決めても、すぐに現金化できるとは限りません。買主探しから契約、決済まで時間がかかるため、余裕を持った準備が必要です。

また、子どもが住む予定のない家を相続すれば、維持管理や固定資産税などが負担になる場合もあります。

だからこそ、50代のうちから家族の意向を確認し、売却するか、残すかを話し合っておくことが大切です。

子どもに何を残すかだけでなく、何を背負わせないか。

私は、その視点も大切にした資産整理が必要だと考えています。

 

 

 

税金は「売却価格」だけでは決まらない

国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」では、相続後に売却する場合の取得費と取得時期の承継を説明しています。生前に本人が自宅を売る場合も、譲渡所得の計算には取得費・譲渡費用・所有期間等の確認が必要です。国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」は一定要件を満たす居住用財産の譲渡所得について最高3,000万円控除を説明していますが、すべての売却に自動適用される制度ではありません。個別の適用要件・申告を税理士等へ確認します。

『親が売って現金化すれば子どもに相続する物はなくなる』という理解は誤りです。現金や預金も相続財産になり得ます。不動産を残さない方針と、遺産をどう承継させるかという法的な問題を分離して考えてください。

 

 

相続人に押し付けないための8つの確認順序

  • 所有する土地・建物を登記事項・固定資産税明細から一覧にする。
  • 住宅ローンと担保・共有名義の有無を確認する。
  • 子どもや関係者の利用意思を別々に確認する。
  • 現在の実勢価格と売却・保有の費用を見積もる。
  • 本人が住む家は退官後の生活拠点とセットで検討する。
  • 売るなら契約・引渡・代金受領までの期間を設ける。
  • 遺言・遺留分・贈与・相続人間の問題は司法書士・弁護士へ確認する。
  • 譲渡所得税・相続税・贈与税の税額判断は税理士へ確認する。

 

2026年給与ワンポイント|処遇改善と退官後の家計は別

防衛省・令和8年版防衛白書「自衛官の処遇改善」は、2025年度から給与面を含む処遇改善が実現し、2027年度に自衛官の給与体系の独自改定を目指す方針を示しています。「改善済みの制度」と「将来の改定目標」は別です。2026年の個人の手取りや退官後所得は一律に算出できません。階級・号俸・手当・控除を反映した本人の給与明細と、退官日・再就職の契約条件を確認してください。また、同白書「新たな生涯設計の確立」の退官後所得の説明は一般的な構造であり、本人の確定給与ではありません。一般職公務員の俸給表を自衛官の給与表として流用しません。

 

 

無料ワークシート|判断を記入する

無料の「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」にある「20 資産を残す・残さない整理表」を使います。不動産ごとに「利用する人・売却予定・維持費・名義・債務・相談先」を記入してください。

 

 

よくある質問(Q&A)

Q1.遺言書を書けば、子どもに家を相続させずに済みますか?

遺言で承継先を指定することは可能ですが、方式・遺留分・他の相続人との関係など法的な判断が必要です。遺言書保管制度だけで内容の有効性は保証されません。

 

Q2.生前に売却したら相続税はなくなりますか?

売却して得た現金も相続財産になり得ます。譲渡所得税と将来の相続税は別に確認します。

 

Q3.住宅ローンが残っていても売れますか?

売却相談は可能です。決済時の完済と抵当権抹消の見通しが立つか金融機関等に確認します。

 

Q4.子どもが県外に住んでいるだけで売った方がよいですか?

本人の居住予定と子どもの利用意思、管理費、将来の売却可能性を確認して判断します。県外居住だけで売却が正解とは限りません。

 

 

Q5.子どもが「実家はいらない」と言った場合、生前に売却しておくべきですか?

子どもに引き継ぐ意思がない場合、生前売却は有力な選択肢です。ただし、親自身の退官後の暮らしを犠牲にしてまで売却を急ぐ必要はありません。

 

 

 

 

 

根拠資料・確認日

公的一次資料と本文の既存記事リンクは2026年10月10日に照合しています。架空の数値例は地域相場や将来予測ではありません。制度・税務・法律・契約・給与条件は公開時の最新情報と個別資料で再確認してください。

 

 

 

 

執筆/監修

株式会社陸自不動産 小松野美貴哉