第4章 4-7 最後まで家を所有しない人生設計は成り立つか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
最後まで家を買わず賃貸で暮らす人生設計は、収入が変わっても家賃を払える資金計画、高齢期に入居・転居できる住まいの候補、保証・緊急連絡・生活支援の手配が成立するなら十分に選択肢になります。しかし、「家賃を払い続けられる」だけでは十分ではありません。契約更新・建物の建替え・家主の意向・健康状態・家賃変動を想定し、70代・80代になっても住み替える現金と連絡先を用意する必要があります。一方、持ち家の取得が必ず安全を保証するわけでもありません。
最後まで借りるなら「30年の家賃」より先に「次の住まい」を考える
家を所有しない選択の最大の利点は、退官後の仕事・家族・健康状態に応じて移動しやすい点です。ただし契約条件によっては、住み続けることや希望の時期に転居することに制約があります。高齢期には収入が変わり、保証人や緊急連絡先の手配が難しくなる場合もあります。「いま借りられているから80歳でも同じ契約で住める」とは断定できません。
一方、家を所有していても固定資産税・修繕・保険・階段・通院・売却の問題は残ります。借りる人生と所有する人生は、両方とも長期の不確実性に向き合う計画です。一般的な費用比較は「賃貸と住宅購入は20年間でどちらが得?」に整理されています。本稿では50代自衛官が定年退官後を経て高齢期まで借り続ける設計へ焦点を当てます。
5つの判断条件|賃貸継続にも撤退基準が必要
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判断条件 |
確認する内容 |
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最大損失額 |
賃料・保証・更新・転居・生活支援費を期間別に積算。寿命・家賃変動が不明なため絶対上限は確定できない。 |
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成功条件 |
家賃・生活費・緊急資金を確保し、健康や契約条件が変化しても次の住まいを探せる。 |
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失敗条件 |
退官後の生活費に家賃が重なり資金が尽きる、入居先の候補がない、保証・緊急連絡が手配できない。 |
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損切り基準 |
家賃上昇や収入減で必要な現金が不足する見込みなら、更新前に家賃帯・地域・制度利用を見直す。 |
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実行しない選択肢 |
現在の賃貸を維持しながら移動候補を調査、低額賃貸へ段階移動、購入案も並行して比較。 |
家賃は死ぬまで固定できるとは限らない|30年の架空計算
以下は物件の相場・将来の賃料予測ではなく、仮定によって負担がどう変わるかを示す試算です。55歳から85歳まで30年間の居住を仮定し、55~64歳は月9万円、65~74歳は月10万円、75~84歳は月11万円と置きます。契約・更新料・引越・家賃債務保証・入居支援・光熱費は未算入で、あくまで算数上の比較です。
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年齢帯(架空) |
月額の仮定 |
10年の賃料 |
累計賃料 |
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55~64歳 |
9万円 |
1,080万円 |
1,080万円 |
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65~74歳 |
10万円 |
1,200万円 |
2,280万円 |
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75~84歳 |
11万円 |
1,320万円 |
3,600万円 |
月9万円で30年間変わらない場合は9万円×12か月×30年=3,240万円、上記の仮定では3,600万円となり、差は360万円です。賃料が必ず上がるという予測ではありません。むしろ自分自身の家計で「賃料を据え置く場合」「上がる場合」「低額物件に移る場合」を並べ、必要資金を算定するための枠組みです。
若年定年退職自衛官の退官後の所得構造について、令和8年版防衛白書「新たな生涯設計の確立」は一般に所得が低下する構造を説明しています。その割合を本人の給与に機械的に掛け合わせて確定収入として記載せず、再就職条件、年金、貯蓄、家計を本人の資料で確認してください。金融庁「ライフプランシミュレーター」は収支試算を支援しますが、将来を保証するものではありません。
「高齢者は借りられない」と決めつけることも危険
高齢になると、賃貸住宅への入居で家主側から保証・残置物・緊急時対応等の確認が求められる場合があります。しかし、年齢だけを理由に市場全体で入居不可能と断定することもできません。地域の不動産会社、居住支援法人、自治体等を通じて、実際に利用可能な制度・住宅・保証条件を個別に確認することが必要です。
国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部改正」によれば、改正住宅セーフティネット法等が2025年10月1日に施行され、居住サポート住宅の認定制度等が設けられました。支援制度の存在は、希望地域で空室が確保されることや、全員が入居できることを保証するものではありません。制度の対象、支援内容、地域の対象住宅を調べます。
また、国土交通省「高齢者向け住宅等」はサービス付き高齢者向け住宅を含む住宅施策を案内しています。支援が必要になったときの居住先候補として調べる価値はありますが、費用や入居条件は一般の賃貸と異なる場合があります。
賃貸の安心は家賃だけでなく、4つの「契約外の準備」にある
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備える要素 |
確認したい具体事項 |
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身元・連絡 |
緊急連絡先、連絡不能時の対応、家族・支援者の同意 |
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契約・保証 |
家賃保証の条件、更新手続、残置物の対応方針 |
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転居時の現金 |
新居の初期費用、運送費、保証費、退去費用 |
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生活と医療 |
通院交通、生活支援、見守り、転倒時の連絡体制 |
70代・80代まで賃貸継続を想定するなら、1軒の家の条件だけを調べるのでは不十分です。今の賃貸が使えなくなった場合の第二候補と第三候補を、公共交通・診療科・家賃帯・保証条件から整理します。家族の連絡体制に限らず、地域の居住支援も調べておくべきです。
「購入しない=負債ゼロ」ではない
持ち家の借入返済を避けられても、賃料や保証契約、退去時費用、更新・引越費用など将来の支払義務が残ります。住宅を買わないことで所有固定費を避けられる場合もありますが、代わりに貸主との契約関係が継続します。収入が下がる可能性のある退官前後には、家賃を「固定費」として数十年の家計に計上します。
賃貸継続が合理的な条件と購入を見送る判断は「家を買わない方がよい家庭とは?」でも整理しています。「今家を買うべき?数年待つべき?」は、待つ期間を単なる先送りではなく、条件が確定するまでの検証期間として捉える手順につながります。

私の場合|家を所有しない人生という選択
私は、住まいは所有すること自体が目的ではなく、安心して暮らすための手段だと考えています。
生涯賃貸で暮らす選択も十分に考えられます。ただし、老後の家賃負担に加え、収入や健康状態の変化、入居審査や保証人の問題なども想定しておく必要があります。
重要なのは、家を買わないという判断だけでなく、何歳になっても安心して暮らせる住まいを確保できるかという視点です。
所有しない人生を選ぶのであれば、将来の住み替え先や生活資金まで含めた準備が大切だと考えています。
退官を基点に30年間を3つの期間へ分けて点検する
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時期 |
先に確認すること |
判断を改める契機 |
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50代~退官前 |
再就職地、所得、預金、家族の生活 |
実際の退官日・就業条件確定 |
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退官~70代 |
毎月の住居費、家賃保証、転居費 |
収入・同居状況・更新条件変更 |
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70代以降 |
通院、公共交通、見守り、居住支援 |
健康・交通・建物の状態変化 |
最終結論|家を買わないことより、住む場所を失わないことが大切
賃貸が適切か、持ち家が適切かに万人共通の結論はありません。ただし50代から準備できることはあります。自分が住む場所の候補を複数持ち、退官後の確定収入で家賃と生活費を支払い、転居費用・緊急連絡先を確保することです。本人の契約条件に照らして継続できるかを定期的に確認するなら、「家を買わない」という選択も現実的な計画になります。
2026年給与ワンポイント|処遇改善と退官後の家計は別
防衛省・令和8年版防衛白書「自衛官の処遇改善」は、2025年度から給与面を含む処遇改善が実現し、2027年度に自衛官の給与体系の独自改定を目指す方針を示しています。「改善済みの制度」と「将来の改定目標」は別です。2026年の個人の手取りや退官後所得は一律に算出できません。階級・号俸・手当・控除を反映した本人の給与明細と、退官日・再就職の契約条件を確認してください。また、同白書「新たな生涯設計の確立」の退官後所得の説明は一般的な構造であり、本人の確定給与ではありません。一般職公務員の俸給表を自衛官の給与表として流用しません。
無料ワークシート|判断を記入する
無料の「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」の「16 所有・賃貸比較表」「18 再就職待機判断表」「19 夫婦二人の住居条件整理表」を使い、年齢帯別の家賃と転居余力、同居者の希望、次の入居先を確認してください。
よくある質問(Q&A)
Q1.生涯賃貸なら老後に家賃が払えなくなるのでは?
本人の年金・貯蓄・支出と賃料次第です。複数の収入・賃料条件で長期収支を試算し、家賃の再検討時期を決めます。
Q2.高齢者は賃貸住宅を借りられないのですか?
一律には断定できません。物件・契約条件により異なり、居住サポート住宅などの制度もあります。希望地域の実際の選択肢を調べます。
Q3.住宅ローンがないなら、家を買わない方が安全ですか?
借入返済負担は避けられますが、家賃、保証、契約・転居費用などが継続します。所有の固定費と同じ期間で比較します。
Q4.80代まで賃貸に住み続けるなら何を準備しますか?
現契約の更新条件、次の住まい候補、保証・連絡体制、引越費用、通院・生活支援を確認します。
Q5.代表は最後まで家を持たない予定ですか?
設計図で確認されているのは、遠方に自宅を所有し、普段は会社近くのワンルームに住んでいるという現状です。将来の所有方針は未確認です。
根拠資料・確認日
公的一次資料と本文の既存記事リンクは2026年10月10日に照合しています。架空の数値例は地域相場や将来予測ではありません。制度・税務・法律・契約・給与条件は公開時の最新情報と個別資料で再確認してください。
- 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部改正」
- 国土交通省「高齢者向け住宅等」
- 金融庁「ライフプランシミュレーター」
- 防衛省・令和8年版防衛白書「新たな生涯設計の確立」
- 防衛省・令和8年版防衛白書「自衛官の処遇改善」
執筆/監修
株式会社陸自不動産 小松野美貴哉