第4章 4-5 夫婦二人になったら住居条件をどう変えるべきか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
子どもが独立して夫婦二人になるなら、部屋数を減らす前に「家の中を安全に移動できるか」「車を使えなくなっても通院・買物が成立するか」「二人の生活圏を無理なく維持できるか」を確認してください。広さが余ることより深刻なのは、家の維持費と移動の負担が、退官後の時間と現金を奪い始めることです。現住居の改修・住み替え・賃貸化は、夫婦それぞれの希望を別々に聞いてから比較します。
まず「広い家をどうするか」ではなく、二人がいつまで生活できるか
部屋が余った、掃除が面倒になったという理由だけで住み替えを急ぐ必要はありません。夫婦二人になった後も、趣味の部屋、親族の来訪、仕事部屋など余剰空間に用途があれば維持する合理性があります。一方で、寝室が2階だけにある、浴室で滑りやすい、車がなければ病院へ行けないという問題は、間取りの広さより優先順位が高くなります。
50代で勤務先に合わせて購入した住宅は、退官後に必要になる居住機能と同一とは限りません。国土交通省「高齢期の住まいの改修ガイドライン」は、温熱環境、外出のしやすさ、トイレ・浴室、日常生活空間の合理化、主要動線上のバリアフリーなど8項目を示しています。対象は高齢者になってからの工事だけではなく、高齢期に入る前の備えも含みます。
5つの評価条件|住み替えを急がず、先に損失を見える化する
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判断項目 |
着目する事実 |
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最大損失額 |
改修・転居・契約初期費用・売却費用・残債不足等を見積もる。市場価格と将来の修繕額が未確定なら上限は確定できない。 |
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成功条件 |
夫婦それぞれの通院・買物・家事・外出が続き、退官後の現金収支に過度な負担がない。 |
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失敗条件 |
片方には便利でも他方に不便、修繕後も階段や交通の課題が残り、資金まで減少。 |
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損切り基準 |
改修見積がない、家族の合意がない、転居後の生活動線を調べていない段階では契約しない。 |
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実行しない選択肢 |
現住居をそのまま維持、部分改修、近隣賃貸を短期間試す、方針決定を延期。 |
夫婦の住居選択は「寝室までの階段」と「病院までの道」で決まることがある
チェックすべきは現在の健康状態だけではありません。寝室・トイレ・浴室が同じ階に置けるか、段差を減らせるか、夏の暑さや冬の寒さを避けられるか、重い買物袋を運ばず生活できるか。家の中が安全でも、病院・スーパー・金融機関・公共交通から遠ければ、退官後は移動の費用と負担が増える可能性があります。
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判断軸 |
今の家で確認すること |
移る場合の確認 |
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寝起き・トイレ |
1階で生活を完結できるか |
階段・エレベーター・夜間動線 |
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入浴・温熱環境 |
手すり、段差、浴室の温度差 |
浴室設備と室内温度の管理 |
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通院 |
公共交通・タクシーの利用 |
診療科と医療機関への行程 |
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買物 |
車が使えない日の代替手段 |
徒歩圏・宅配・支援サービス |
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夫婦別の生活 |
片方が不在でも暮らせるか |
各人の仕事・趣味・交友を維持できるか |
医療・交通が維持できる場所での小規模な住まいは、床面積の大きな郊外住宅より生活を守りやすい場合があります。ただし、賃貸物件でも高齢者に適した設備や契約条件があるとは限りません。立地と建物の双方を現地で確認することが不可欠です。
「リフォームすれば終わり」ではありません。改修費の回収先は居住年数です
改修の評価は「工事で家の売却価格が上がるか」だけでは判断できません。たとえば寝室を1階へ移す工事は、転倒リスクと階段利用を減らす効果が主目的です。予定する居住期間が短いなら、改修費と将来の転居費を比較する必要があります。既存記事「価値を上げるリフォームとは?」では売却を見据えた改修の考え方を扱っています。本稿では「夫婦が何年安心して住み続けられるか」を別軸に据えます。
改修の費用は、単純な工事代金だけではありません。仮住まい・家具移動・追加工事の予備費を含めて見積もり、地震・雨漏り・設備寿命など住まいの根本課題も先に調査します。安全設備だけを増設しても建物全体の問題が解消するわけではありません。
架空試算|改修の金額と、住み替え費の金額は別の財布で比較する
比較方法を示す架空の数値です。現住居の1階生活化工事240万円、工事関連・予備費60万円、税・保険・保守年32万円、10年以内の追加設備工事120万円と仮定します。賃貸住み替えは賃料・管理費月9万円、初期費45万円、引越35万円を想定します。現住居を売る場合の売却手取り、元の住宅ローン、賃料上昇、税金、物件価格は計算対象外です。
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10年間の支出項目 |
現住居を改修して保有 |
賃貸へ住み替える |
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改修・初期・引越等 |
300万円 |
80万円 |
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毎年の居住・維持費 |
32万円×10=320万円 |
9万円×120=1,080万円 |
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追加の大型支出 |
120万円 |
未算入(更新・転居等) |
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対象項目の仮合計 |
740万円 |
1,160万円 |
上表だけで「改修が420万円得」と判断してはいけません。現住居の資産価値、売却できる金額、住宅ローン残高、住み替え先での医療アクセス、賃貸の契約費用がそろっていないためです。住み替え比較では、「賃貸と住宅購入は20年間でどちらが得?」にある費用項目の考え方も併せて参照してください。
夫婦の意見が違った場合は、先に暮らしの優先順位を分ける
本人には退官後の再就職先への通勤が必要でも、配偶者には現在の医療機関・友人・買物環境が不可欠かもしれません。夫婦の希望が異なるときに「どちらの希望を優先するか」を急いで結論づけると、転居した後で負担の偏りが明らかになる場合があります。本人と配偶者で、絶対条件・妥協条件・避けたい条件をそれぞれ書き出します。
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夫婦別に聞くこと |
本人の回答欄 |
配偶者の回答欄 |
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暮らしたい地域 |
通勤・親族・趣味など |
通院・買物・友人など |
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譲れない住居条件 |
段差・広さ・予算 |
交通・安全・居室配置 |
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転居してもよい時期 |
退官後・再就職後など |
仕事・家族行事など |
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不在時の備え |
家事・緊急連絡 |
病院・移動手段 |

私の場合|夫婦二人の暮らしに適した住まい
定年退官後、夫婦二人で暮らす住まいを考えるなら、住宅の広さや資産価値だけでなく、日常生活の利便性も重要です。
特に、買い物や通院、交通手段、将来の身体的な負担など、夫婦それぞれの生活を考慮する必要があります。
大切なのは、持ち家があるから住み続けるのではなく、夫婦二人が無理なく安心して暮らせる場所なのかを判断することだと考えています。
最終判断|工事も売却も急がないための4手順
- 夫婦それぞれの希望条件を別々に書き、絶対条件の衝突を確認する。
- 家の中と家の外の生活動線を現地で点検する。
- 改修・保有継続・賃貸住み替えの10年間の支出項目を同じ表に並べる。
- 退官日・再就職・健康状態・家族の生活予定を確認して、購入・売却・改修の実行時期を決める。
2026年給与ワンポイント|処遇改善と退官後の家計は別
防衛省・令和8年版防衛白書「自衛官の処遇改善」は、2025年度から給与面を含む処遇改善が実現し、2027年度に自衛官の給与体系の独自改定を目指す方針を示しています。「改善済みの制度」と「将来の改定目標」は別です。2026年の個人の手取りや退官後所得は一律に算出できません。階級・号俸・手当・控除を反映した本人の給与明細と、退官日・再就職の契約条件を確認してください。また、同白書「新たな生涯設計の確立」の退官後所得の説明は一般的な構造であり、本人の確定給与ではありません。一般職公務員の俸給表を自衛官の給与表として流用しません。
無料ワークシート|判断を記入する
無料の「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」にある「19 夫婦二人の住居条件整理表」と「03 家族居住年表」を使用します。夫婦の希望を別々に書き、退官日、通院・交通条件、改修と転居を比較してください。
よくある質問(Q&A)
Q1.夫婦二人なら広い持ち家を売った方がよいですか?
部屋数だけでは決められません。維持費、外出・通院、階段、夫婦の居住希望、売却後の生活場所を確認します。
Q2.売却益が大きければ、住み替えは正解ですか?
売却代金から残債・売却諸費用・税・引越費等を差し引いた後の資金と、新居の生活継続可能性で判断します。
Q3.バリアフリー改修をすれば住み続けられますか?
建物の構造・立地・周辺交通によっては改修だけでは解消しない課題があります。個別現地調査が必要です。
Q4.夫婦で希望が違う場合に先に契約してよいですか?
転居先の生活圏・負担・契約後の費用を話し合い、合意できない条件があれば契約前に保留します。
Q5.代表自身は夫婦二人で住み替えたのですか?
そのような家族生活の事実は設計図にありません。代表の確定経験は「所有する家と日常の生活場所を分けている」点に限定しています。
根拠資料・確認日
公的一次資料と本文の既存記事リンクは2026年10月10日に照合しています。架空の数値例は地域相場や将来予測ではありません。制度・税務・法律・契約・給与条件は公開時の最新情報と個別資料で再確認してください。
執筆/監修
株式会社陸自不動産 小松野美貴哉