第4章 4-4 再就職先が決まるまで家を買わない方がよいか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
退官後の再就職先、勤務地、雇用期間、手取り収入が未定なら、家の購入を保留する判断には明確な合理性があります。ただし一律に待つべきではありません。家族が既に長期間暮らす地域、購入後の現金余力、通勤・転居費用、融資条件を確認し、「今買う・再就職後に買う・賃貸を続ける」の3案を比較してください。待機中の家賃は費用ですが、間違った場所の不動産を長く保有する負担も費用です。
契約する前に決める5条件|購入延期の成功・失敗を検証する
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項目 |
判断の基準 |
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最大損失額 |
購入した場合の取得費・短期売却損・二重居住・通勤の支出と、待機案の賃料・住替費用。仕事・将来価格が未確定のため最大額は個別見積後に設定。 |
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成功条件 |
再就職地と居住地が合致し、家族の暮らしと退官後家計の両方に無理がない。 |
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失敗条件 |
再就職先から長距離通勤が必要、転居のため早期売却する、再就職後の返済余力が足りない。 |
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損切り基準 |
勤務地・手取り・雇用期間の確認がなく、購入後の預金も薄い場合は売買契約を保留。 |
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実行しない選択肢 |
賃貸を継続、就業先決定後の購入、家族だけ現住居を維持し本人が短期賃貸。 |
家を買う場所を、退官前の勤務地で決めてはいけない
現役の部隊や官舎から通いやすい地域は、退官後に同じ価値を持つとは限りません。退官に伴い仕事内容・勤務地・通勤時間・生活時間帯が変わると、今の住宅条件が負担になる可能性があります。希望する家そのものが良い物件でも、再就職後に暮らす場所として適さないかもしれません。
防衛省の「退職自衛官に対する再就職支援」は、職業訓練等の再就職支援の仕組みを案内しています。一方、支援制度があることと、本人の就職地域・時期・手取り・雇用期間が確定していることは別です。令和8年版防衛白書「新たな生涯設計の確立」の一般的な所得構造も、採用通知書に記された本人の収入へ置き換えることはできません。
判断を誤らせる「4つの未確定」を洗い出す
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未確定の事項 |
購入へ与える影響 |
必要な確認 |
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勤務地 |
通勤時間・転居・二拠点費用 |
勤務予定地、転勤の可能性、勤務日数 |
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月々の手取り |
住宅ローン負担率・預金余力 |
契約条件、税・社会保険の控除、諸手当 |
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雇用期間・働き方 |
勤務継続期間と居住予定年数 |
雇用契約書、契約更新・再々就職の可能性 |
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家族の生活圏 |
転居の合意と費用 |
家族それぞれの仕事・通学・希望年数 |
上記4項目が未確定でも、家族が既に地域に根付き長期にわたり住む見込みがある場合には購入を検討する合理性もあります。その場合も退官後に本人が別居する選択肢と二重生活費を資金表へ含めます。
架空比較|「1年待つ費用」と「早く買って移動する費用」
待機の現金支出は可視化できますが、「待つ間に価格が必ず下がる・金利が必ず上がる」といった予測は採用できません。架空条件:賃貸費8万円/月、待機12か月、途中の住替え・敷金等を仮に45万円とします。一方、購入後に勤務地が変わった場合、住宅を維持したまま勤務先近くで月7万円の賃貸を12か月借り、契約・引越等50万円を仮定します。購入側のローンや税等は別途必要です。
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現金支出の仮定 |
賃貸で12か月待機 |
購入後に二拠点が必要 |
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当該の住居費 |
8万円×12=96万円 |
勤務先側7万円×12=84万円 |
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初期・移動費 |
45万円 |
50万円 |
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合計(別途所有住宅費を除く) |
141万円 |
134万円+持ち家全費用 |
両案の差は単純に7万円ですが、購入後の二拠点案には住宅ローン返済、税、保険、修繕等が別に必要です。反対に賃貸待機案では12か月後も購入時の取得費や金利条件が確定していません。どちらが得かという結論を上表の数字だけで出せないことが、比較表を作る意味です。
「住宅ローンは現役中に組んだ方が有利」と聞いたら
一般に住宅ローン審査は年齢や収入、勤続状況、返済負担、完済時年齢など個別条件に左右されます。退官後に申込条件が変わる可能性はあるため、現役中の融資可能性を先に金融機関へ確認することには意味があります。しかし、審査に通りやすい時期と、購入後に住みやすい地域や返し続けられる金額が一致するとは限りません。
たとえば住宅金融支援機構「フラット35 ご利用条件」は年齢や借入期間などの制度要件を公開していますが、民間金融機関全体の統一条件ではありません。仮審査結果で契約の確実な履行を保証することもできません。保有リスクと融資条件を分けて、本人の商品条件で比較してください。
私の場合|退官後の働き方と住まい
私は定年退官後、不動産業に携わるようになり、現役時代とは働き方や生活環境が変わりました。
退官後の住まいを考える際は、再就職先や通勤時間、家族の生活環境などを踏まえて、住む場所を判断することが重要です。
特に再就職先が決まっていない場合は、住宅購入を急がず、退官後の勤務条件や生活拠点が明確になってから住まいを選ぶことも、合理的な選択肢だと考えています。
待機のまま何年も過ぎることを防ぐ「再判定の時点」
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確認の時点 |
準備する事実 |
購入・待機の判断 |
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退官の前 |
退官日、家族の居住地域、現役収入、預貯金 |
地域・収入が未定なら条件整理を優先 |
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採用条件の提示時 |
勤務地、月給、雇用期間、転勤条項 |
予算と通勤条件を再計算 |
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就業開始後 |
通勤時間、手取り実績、家族の生活 |
購入・賃貸・二拠点を比較 |
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再就職条件変更時 |
収入・通勤・契約更新 |
固定住居費の負担を再判定 |
購入延期は何もしない時間ではありません。物件調査、地域見学、融資商品条件の確認、家族の生活年表、預金残高の設定を進める期間です。一般的な「買うか待つか」の比較は「今家を買うべき?数年待つべき?」に、購入を控える条件は「家を買わない方がよい家庭とは?」に整理されています。
実務判断の最終順序|不確実さを価格の安さで覆わない
- 本人と家族の居住希望を、勤務先とは別に記録する。
- 再就職の勤務地・手取り・雇用期間が確定したかを確認する。
- 現役中の融資条件と退官後の融資条件を、金融機関へ個別に照会する。
- 購入・賃貸待機・二拠点の5年計画を同じ支出項目で比較する。
- 最低限必要な生活防衛資金が残らない案、立地が未確定の案は契約を保留する。
2026年給与ワンポイント|処遇改善と退官後収入は別
防衛省「令和8年版防衛白書・自衛官の処遇改善」は、2025年度から30を超える手当等の新設・引上げなどを含む処遇改善が実現したと説明し、2027年度に自衛官の給与体系の独自改定を目指す方針を示しています。一方、同白書「新たな生涯設計の確立」が述べる若年定年後の所得低下を、現役時代の給与改善によって解消済みとは扱えません。2026年の住宅判断には階級・号俸・手当・控除を反映した本人の給与明細を使い、退官日以降は確定した再就職条件だけを確定収入として計上してください。一般職国家公務員の俸給表を自衛官の給与表と混同しません。
無料ワークシート|判断を現金と生活条件に落とし込む
「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」(公式PDF)の「05 再就職先と住宅立地比較表」「18 再就職待機判断表」に、勤務地・通勤・雇用期間・手取り・購入延期の再判定日を記入してください。
よくある質問(Q&A)
Q1.再就職先が未定なら家を買ってはいけませんか?
禁止ではありません。家族の居住地が固定し、退官後の資金計画に十分な余力がある場合も考えられます。条件不明のままの契約を避ける趣旨です。
Q2.再就職が決まる前に住宅ローンの仮審査だけ受けてもよいですか?
相談や仮審査の可否は金融機関・商品に確認できます。ただし仮審査は将来の本審査承認や融資実行を保証しません。
Q3.待っている間の家賃は無駄になりませんか?
居住サービスに対する支出であり、比較の費用には計上します。一方、購入・早期転居に伴う取得費や二重負担も同じ表へ計上します。
Q4.家族は今の地域に住み続けたい場合、購入を優先すべきですか?
家族の居住年数や本人の就業先・単身赴任費用を確認し、所有が合理的か検証します。
Q5.現役中の給与改善を理由に購入予算を増やせますか?
2026年の実際の給与明細と退官後の収入見込を分けて試算します。白書の処遇改善方針だけで将来返済を保証できません。
一次資料・確認日
公的資料・関連既存記事の確認日:2026年10月10日。数値例は架空の前提による計算であり、特定物件の相場、将来の予測、代表本人の取引実績を示しません。融資・法律・税務等の個別条件は契約書と専門窓口で確認してください。
執筆/監修
株式会社陸自不動産 小松野美貴哉