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〒856-0805 長崎県大村市竹松本町840番地9号2F

第2章 2-7 転勤・単身赴任で長く住んでいない家を、定年前にどう整理する?

50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論

転勤・単身赴任で長く住んでいない持ち家は、「いつか戻る」という予定だけで保有を続けず、①現在の利用者、②維持・管理と安全性、③住宅ローン残債・居住条件、④退官後の居住地、⑤売却までの所要期間を一体で調べてください。退官後に住まない見通しが強い場合は、管理だけを延長するより売却条件を早めに調査する価値があります。ただし、家族が居住中の住宅と完全な空き家を同一視してはいけません。

 

 

最初の判断表|住まない家を持ち続ける「最大負担」を見積もる

判断

判断・停止の基準

最大損失額

年間の住宅ローン・税・保険・管理・修繕と、価格下落・契約上の違約等を別枠で算定。期間と売却額が未確定なら総額も未確定

成功条件

不在中の管理が継続でき、退官後の居住または売却について合理的な時期と資金が決まっている

失敗条件

劣化・災害・近隣被害を放置、無断賃貸、管理支出の不足、退官後に売れず二重生活

損切り基準

修繕・保有費が積み上がるだけで再利用予定がなく、管理不能や資金不足が明らかなら売却・用途変更を具体的に検討

実行しない選択肢

当面保有・定期管理、家族居住を継続、退官後に居住見込みを再検証

 

 

家の状態は「空き家」「家族居住中」「貸している」で異なる

自衛官本人が単身赴任中でも、家族が自宅に居住しているなら、建物の管理・生活拠点・住宅ローン契約上の扱いは無人の空き家と異なります。まず住民票だけではなく、誰が生活しているか、何か月利用していないか、今後戻る予定があるかを確認します。

利用状況

優先する管理

税・契約上の注意

家族が居住

本人と家族の居住予定を共有、設備維持

住宅ローン・補助制度の条件を金融機関等へ確認

完全に空き家

通水・換気・外壁・樹木・雨漏り等の点検

所有者の維持義務・保険・居住実態への影響

賃貸中

入居契約、賃料、修繕、管理委託を確認

借入契約の賃貸可否・賃借人の権利

使用予定が未定

帰還予定の実現性、売却までの期間

退官後の住宅費と売却手取りを比較

 

不在住宅の管理方法については国土交通省「空き家の管理のやり方」が点検や専門業者利用の考え方を案内しています。建物に異常が発生していないかを実地で点検できない状態が続くなら、放置を前提とした保有は避けるべきです。

 

 

「戻る予定」を具体的な日付に変える|勤務中と退官後の時間軸を分ける

転勤先が変わる可能性のある現役中は、持ち家をいつ使うか確定しにくい一方、定年退官の日程は本人の階級・適用制度に沿って把握可能です。退官日を起点に、再就職地・本人の通勤・家族の居住希望と照らして、保有を続ける理由が残るか検討します。

時期の目安

調査と判断

翌段階へ進む条件

退官の2年以上前

利用状況・借入・管理費・設備状態・売却相場を確認

修繕・売却・賃貸の比較資料がある

退官の1年前

再就職地域、家族居住年表、売却準備事項を整理

境界・名義・借入条件等の問題を特定

退官の半年前

売却なら媒介条件・価格調整、保有なら管理契約

売却期限または管理予算を設定

退官直前

現実の売却状況・退官後の現金収支を点検

住まいの移動が実行可能

退官後

必要なら予定と実態の差を再評価

次の判断日を先送りせず指定

 

表の期間は法律で定める義務期限ではありません。実務計画の例であり、物件の状態や市場、帰省・移動可能性によって調査着手日は変わります。退官直前に初めて雨漏り・境界・未登記増築などが判明すると、売却決済を希望期日に合わせられない場合があります。

 

 

私の場合

私は陸上自衛官として約36年間勤務し、陸曹長として定年退官しました。勤務年数だけでは、退官後の住まい方の答えは決まりません。現役時代の勤務条件と退官後の暮らしを分けて考える必要があります。

「どの勤務先から通うか」と「退官後にどの家で暮らすか」は別の質問です。定年までの時期、再就職の地域、家族の生活を基準に家を保有するかを考える視点を重視しています。私自身が特定の転勤地で自宅を空き家管理した経験がある、または単身赴任中に自宅を貸したという話は確認されていないため、本人の体験として記述しません。

 

 

架空試算|空き家保有費は住宅ローン以外にも発生する

架空の持ち家について、ローン月7万円、固定資産税等年12万円、保険・基本光熱費等年14万円、巡回・除草等年24万円、修繕予備費年30万円と仮定します。一般的な相場を示す数字ではなく、保有費を分解するための計算例です。

費目

年間の架空負担

3年継続の架空負担

ローン返済7万円×12

84万円

252万円

固定資産税等

12万円

36万円

保険・基本光熱費等

14万円

42万円

巡回・除草等

24万円

72万円

修繕予備費

30万円

90万円

合計

164万円

492万円

 

ローン返済額には元本返済分も含むため、全額を「失う費用」と断定することはできません。ただし家計から現金が流出する点は同じです。3年後に家を売却したとしても、税金・仲介費用・売却価格の増減は別途発生します。したがって「家の価値がある」と「保有期間中の資金負担を賄える」は分けて考えます。

 

 

保有・賃貸・売却を同時に比べる

選択肢

経済面

検討すべき条件

管理しつつ保有

費用は続くが帰還可能性を保持

管理責任者・年間予算・再利用予定日

賃貸化

家賃収入の可能性がある

金融機関への届出・承諾、賃貸需要、修繕、契約終了までの制約

売却

保有負担を減らし現金化を検討

残債完済、売却費用、所得税、引渡日

決定延期

判断材料を追加調査できる

いつまでに何を調べるか期限を定める

 

住宅ローンを借りたときの「自己居住」の条件は商品・金融機関・契約内容によって異なります。転勤で家族全員が転居した場合の必要手続や、賃貸利用の可否を確認せずに第三者へ貸してはいけません。住宅金融支援機構は「住所・氏名等の変更」の手続を案内し、財形住宅融資に限る「転勤などで一時的に住めなくなったとき」では留守管理に関する独自条件を示しています。財形住宅融資の条件を全ての住宅ローンに当てはめず、必ず借入先で確認してください。

住宅ローン返済中の売却に必要な残債・抵当権の考え方は「住宅ローン返済中でも転勤を理由に家を売却できる?」へ接続します。自宅をすぐ売るか貸すか維持するかという三択の基本論点は「転勤が決まったら持ち家は売却した方がよい?」でも解説しています。

 

 

空き家管理の実務|「住んでいない=費用ゼロ」ではない

  • 屋根・外壁・雨樋・擁壁・門扉などの異常を定期点検し、写真付き記録を残す。
  • 通水・換気・雨漏り・結露・配管の異臭、害虫や動物の侵入を確認する。
  • 庭木の越境や雑草、ポスト満杯、郵便物・ゴミ、鍵の管理体制を確認する。
  • 火災保険・地震保険の契約条件、空き家状態の通知要否を保険会社に確認する。
  • 災害後の緊急点検担当、修繕発注の権限と予算限度を決める。
  • 近隣連絡先と管理会社の報告頻度を共有し、所有者本人が遠方でも状況を把握する。

国土交通省の「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」には管理不全空家等・特定空家等への対応指針が掲載されています。2026年9月3日改正のガイドラインが案内されていますが、個別物件が行政措置の対象となるかは自治体の調査・判断によります。外観がきれいという理由だけで長期無管理を正当化してはいけません。

 

 

売却の時期は査定額だけでは決まらない

売却可能性を見る際は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の公表情報だけでなく、実地の建物調査、境界資料、道路や駐車条件、空き家期間中の劣化、残置物の量などを照合します。公表価格は個別の売却額を保証しません。決済までに抵当権抹消と所有権移転が可能か、売主が遠方からどう本人確認・書類返送を行うかも確認します。

早期に情報を揃える視点は「突然転勤が決まった。あと1か月しかない」の短期対応ともつながります。ただし、本稿では現役中の突発異動より、退官までに保有費と利用予定を整理する中期計画に重点を置きます。

 

 

保有継続を止める・待つ判断の分岐点

  • 家族も本人も居住予定がなく、具体的な再利用時期が示せない場合は売却調査を開始する。
  • 借入契約や保険の条件に違反するおそれがある場合は賃貸計画を止め、金融機関等へ照会する。
  • 設備劣化・越境・近隣への危険の疑いがあれば、売却判断に先行して安全確保を行う。
  • 年間管理予算が退官後家計に合わない場合は、保有期間短縮や売却価格の再検証へ進む。
  • 家族が居住中なら本人の勤務移動だけを理由に即売却せず、生活期間と家族の希望を確かめる。

 

2026年給与ワンポイント|退官後の住居費と切り分ける

防衛省「令和8年版防衛白書:自衛官の処遇改善」は、2025年度から手当の新設・増額など給与面を含む処遇改善が実現したことと、2027年度に自衛官独自の給与体系改定を目指す方針を説明しています。改定方針は全員の2026年の年収や個々の退職手当を示すものではありません。住居費は本人の現在の給与明細(階級・号俸・手当等)、実際の定年退官日、再就職後の契約条件で別々に試算し、人事院の一般職俸給表を自衛官給与表として流用しないことが重要です。

 

 

無料ワークシート|数字と希望条件を整理する

「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」公式PDFの「06 売却後居住計画表」で帰還・家族居住の予定、「07 住宅ローン残債確認表」で残債と金融機関条件、「08 売却時期比較表」で退官前後の価格・費用・管理負担を記録してください。

 

 

 

よくある質問(Q&A)

Q1.転勤で誰も住まなくなった家はすぐ売るべきですか?

即売却とは限りません。帰還予定、残債、年間管理費、劣化状況、家族の生活を確認して保有・賃貸・売却を比較してください。

 

Q2.単身赴任で家族が居住している場合も空き家になりますか?

一般的な管理上、家族が実際に居住している住まいと無人の住宅は異なります。住宅ローンなどの制度上の扱いは個別契約を確認します。

 

Q3.住宅ローンのある家を本人判断で貸してよいですか?

借入契約の居住・賃貸条件によります。契約違反が生じる可能性もあるため、賃貸借契約に先立ち金融機関へ相談してください。

 

Q4.不在期間が長い場合、家の価値は必ず下がりますか?

必ずではありません。立地や土地相場などにも左右されます。ただし、管理不足による劣化や修繕費の発生を想定する必要があります。

 

Q5.退官後に家へ戻る予定が変わった場合は何を見直しますか?

生活拠点、売却可能額、完済資金、管理費、再就職地を再試算します。想定から外れた時点で売却・保有の再判断日を設定します。

 

 

 

 

 

根拠資料・確認日

公的制度・一次資料は2026年10月10日に確認。法令、税制、給与・手当、各種制度は公開・更新時に再確認してください。公式資料は各論点の本文にも直接リンクしています。

 

 

 

 

 

執筆/監修 株式会社陸自不動産 小松野美貴哉