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〒856-0805 長崎県大村市竹松本町840番地9号2F

第3章 3-5 退官後の持ち家には税金・保険・修繕費がいくら必要か?

50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論

住宅ローンを完済しても、持ち家の住居費がゼロになるわけではありません。固定資産税・都市計画税(課税対象の場合)・火災保険・地震保険・維持修繕費・設備更新費・管理費などが続きます。必要額は地域・住宅の評価額・構造・補償条件・劣化状況で変わるため、全国共通の「月○万円」を断定できません。現実の納税通知書・保険更新案内・点検見積を使い、ローン返済と別勘定で年間維持費を計算してください。

 

 

保有し続ける前に確認する5条件

判定項目

先に確かめる内容

最大損失額

毎年の保有費+一時修繕・保険自己負担+売却に伴う費用。個別の証憑と複数年試算なしに上限確定不可。

成功条件

住宅ローン以外の固定費・変動費・修繕予備費を支払っても退官後の生活費を確保できる。

失敗条件

返済額のみで住宅予算を考え、税・保険更新・大規模修繕で資金が不足する。

損切り基準

年換算保有費で家計が恒常赤字となる、必要修繕資金が確保できない場合は保有計画を停止し売却等を比較。

実行しない選択肢

不要な改装をしない、保険を適正補償で見直す、現宅維持と住み替えを比較する。

 

 

 

毎月の住宅ローンだけを家計簿に書くと何が抜けるのか

固定資産税等の年払い、保険の数年契約、給湯器や屋根の不定期の工事は、毎月の通帳に同じ形で出ないことがあります。住宅ローン完済を「住宅費の終了」と考えると、年間維持費の現金を準備しないまま定年を迎える可能性があります。金融庁「ライフプランシミュレーター」でも住宅ローンのほかに税金、火災保険料、修繕積立金等を住居維持費として考慮しています。

 

費用の分類

実額の確認資料

よくある計算の抜け

固定資産税・都市計画税

自治体の納税通知書・課税明細

住宅用地特例・評価替えを無視した一定額の推測

火災・地震保険

保険証券・更新案内・見積

補償範囲・免責・更新保険料を確認しない

屋根・外壁・防水

建築士・工事業者の点検・見積

工事の年だけ費用が突出する

給排水・給湯・空調

交換履歴・設備見積

設備が毎年同じように壊れる前提にしている

維持管理

庭木、除草、点検、水道、交通

自分の労力や遠方移動を計上しない

借入返済

返済予定表・最新残高

返済額だけを所有コストとする

 

 

税額は売買価格から計算できない|納税通知書が出発点

固定資産税の基礎となる評価と購入価格・現在の査定額は同じ数字ではありません。住宅用地の特例や建物の経年評価、自治体の都市計画税の有無などを含めて確認します。税額を一定の割合で売買価格へ掛け、すべての住宅で共通と説明することは適切ではありません。

まず自治体からの納税通知書・課税明細を確認し、所有地に複数筆の土地、増築部分や附属建物、都市計画税の課税対象が含まれるかを見ます。所有者が複数いる場合は負担の配分も整理します。将来の評価・税率変更は確定情報として扱わず、実際の通知額を基準に複数条件で試算します。

 

 

保険は「入っている・いない」ではなく、補償内容と免責を見る

火災保険と地震保険は同じ補償ではありません。日本損害保険協会「地震保険」によると、地震保険の契約金額は火災保険契約金額の30~50%の範囲で、建物・家財それぞれに限度額があります。保険料は所在地や建物構造、耐震性等によって変わります。保険に入っていれば損害を全額補填できる、と解釈してはいけません。

退官後に居住実態が変わる、空き家になる、賃貸へ転用するなどの場合には、現在の保険条件が継続して適用されるか保険会社へ確認します。災害後に追加修繕費が必要になる場合もあるため、補償の対象外や自己負担分も家計に残しておく必要があります。

 

 

架空試算|「ローン完済だから月0円」がなぜ危険か

以下は家計構造を示す仮定であり、税額・保険料・修繕費の市場相場ではありません。持ち家の年間負担を仮に次のとおり設定します。

所有コスト(架空)

年間の仮定額

月換算

固定資産税・都市計画税

12万円

1万円

火災・地震保険

10万円

約0.83万円

通常修繕・大型修繕の積立

36万円

3万円

点検・庭木・設備予備費

12万円

1万円

合計(ローン抜き)

70万円

約5.83万円

 

年間70万円なら、同額が20年間続く単純仮定で1,400万円です。税・保険・工事費の将来上昇や設備故障の偏りは考慮していません。現金収支としては、完済後も月換算約5万8千円を準備する設計です。住宅ローンを完済しても通帳から払う現金が残る点を強調するための試算です。

 

 

架空比較|返済中と完済後、どちらも保有費は残る

上記の年70万円の維持費を固定し、住宅ローン月8万円(年間96万円)という仮定を追加します。

状態(架空)

年間のローン返済

年間の維持費

年間の現金支出

ローン返済中

96万円

70万円

166万円

ローン完済後

0円

70万円

70万円

返済中20年間の単純合計

1,920万円

1,400万円

3,320万円

 

ローン返済の中には元本返済分も含まれます。年間166万円の全額を経済上の損失と扱うのは不正確ですが、家計から支払う現金総額の把握には役立ちます。20年の間に完済年が到来する場合、実際には期間を分割して計算する必要があります。

 

 

持ち家と賃貸を比べるときに避けるべき比較

家賃月8万円と住宅ローン月8万円だけを見て「同額」とするのは不十分です。賃貸には共益費・更新費・引越費用があり、持ち家には取得費、税・保険・修繕、売却費用や残存価値が関係します。「賃貸と住宅購入は20年間でどちらが得?」は全期間比較の枠組みを示していますが、本稿は退官後に既存の家を持ち続ける際の年間資金繰りに焦点を当てます。

所得が変わる定年退官前後は、保有費を給与額から一律の比率で決めるのではなく、支出後の現金余力で判断します。現実の家計に保有費の行を追加したら赤字へ転落するかどうか、「手取り収入から住宅購入予算を逆算する方法」と照らしてください。古い家の改修が控えているなら「価値を上げるリフォームとは?」で工事の性格も分けます。

 

 

不動産運用経験があっても他人の年間維持費は断定できません

私は現役中に不動産4棟の運用を経験しました。所有していることと、将来まで無理なく持ち続けられることは同じではありません。収入、借入、管理、出口を同時に考える必要があります。運用した物件の具体的な税額・保険料・修繕費の実績は確認されていないため、掲載した架空の70万円を私自身の費用として紹介することはしません。

退官後の生活設計では、家賃収入を生む投資物件と、本人・家族が暮らす住宅を同列にしないことが前提です。持ち家は現金を生まなくても生活上の価値を持ちます。しかし、支払が必要な税・保険・修繕費は本人の生活費から賄う必要があります。

 

 

固定費を確定してから保有判断をする手順

  • 納税通知書を取り出し、税目・対象不動産・年間合計額を整理する。
  • 保険証券の期間・更新日・補償内容と免責条件を確認する。
  • 建物点検と修繕履歴から5年・10年・20年の支払予定を仮置きする。
  • 年間費用を12で割り、毎月の現金残高から積立可能額を確認する。
  • 退官後の収支が維持できなければ不要工事を見直し、保有と売却・住み替えを比較する。

 

2026年給与ワンポイント|現役給与と退官後収入を分ける

防衛省「令和8年版防衛白書|自衛官の処遇改善」は、2025年度から各種手当の新設・増額など給与面の処遇改善が行われ、2027年度中に自衛官の給与体系の独自改定を目指すことを示しています。ただし将来の改定方針は、各人の2026年の給与額や退官後の収入を保証しません。現役時代の住居費を基準にせず、本人の現在の給与明細、退官時期、再就職契約、年金見込みなどを分けて記入してください。人事院の一般職俸給表を自衛官の給与表と取り違えないようにします。

 

 

無料ワークシート|家計と住宅の状態を記録する

「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」の「13 住宅維持費年間一覧」に納税通知書・保険証券・修繕見積の実額を書き、「17 老後資金温存シート」で退官後の現金余力と予定外の出費を比較してください。単年度だけでなく5年・10年・20年の合計も点検します。

 

 

よくある質問(Q&A)

Q1.ローンを完済した持ち家なら住居費はかかりませんか?

いいえ。固定資産税・保険・修繕・管理などが続きます。実際の請求書と見積に基づいて年間費用を算定してください。

 

Q2.固定資産税は家を買った価格の1.4%と計算すればよいですか?

購入価格がそのまま課税標準となるわけではありません。評価や特例等の取扱いを自治体の課税明細で確認してください。

 

Q3.火災保険に入っていれば地震被害も全て補償されますか?

火災保険と地震保険の補償は異なります。加入条件・限度額・免責・契約期間を保険会社へ確認します。

 

Q4.修繕費は年間何万円を見込めば安心ですか?

建物の状態、必要工事の種類と実施年、積立残高で変わります。専門家の見積を年表へ反映してください。

 

Q5.維持費を出せない場合はすぐ売却するしかありませんか?

即売却だけが選択肢ではありません。不要工事の見直し、保険契約の適正化、住み替え、売却時期の比較を行い、安全に必要な修繕は後回しにしないようにします。

 

 

 

 

 

根拠資料・確認日

公的制度・公式資料および既存記事の確認基準日:2026年10月10日。制度・補助、契約、税務、保険の取扱いは公開時点で再確認してください。架空の費用・家計・残債は実際の相場・予測・個別事例ではありません。

 

 

 

 

執筆/監修 株式会社陸自不動産 小松野美貴哉