第3章 3-4 持ち家の10年後・20年後の修繕費をどう備えるか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
持ち家の修繕費は「毎月いくら積み立てるか」だけでは足りません。屋根・外壁・給湯設備・給排水・防水など、異なる部位の更新が同じ年に重なることがあるため、10年・20年の工事予定と現金残高を年別に作る必要があります。修繕見積を取らず「古くなったら退職金で払う」としている場合、退官後の生活資金と住宅維持費が衝突する可能性があります。
修繕積立前に示す5つの判定基準
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判定項目 |
実務上の確認 |
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最大損失額 |
直近に必要な安全工事+20年間の更新工事+代替住居・応急費など。見積がない段階の金額は推測不可。 |
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成功条件 |
安全上優先する工事の資金と生活防衛資金を確保し、積立・工事が同時に回る。 |
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失敗条件 |
安易な先送りにより雨漏り等が拡大し、複数工事が退官直後に集中する。 |
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損切り基準 |
工事が家計の維持可能額を超えたら、高額工事の発注を保留し保有・売却・住み替えを比較。危険箇所は応急措置を優先。 |
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実行しない選択肢 |
不要な意匠改修を見送る、安全な部分修繕から行う、売却・住み替えを比較する。 |
なぜ修繕費を1本の「年間○万円」で見てはいけないのか
設備にはそれぞれ劣化のしかたや更新時期があります。雨漏り、外壁の傷み、給湯器の故障、給排水管の不具合は同じ時期に発生するとは限りません。平均積立額だけを見ていると、工事が集中した年に現金が不足します。国土交通省「住宅は若返る?長く、快適に住まいを保つ」は、日常点検と適切な更新、戸建住宅の所有者自身による維持資金確保を説明しています。
「屋根はあと何年」「設備は何年で必ず交換」といった定数を設定せず、メーカー保証や点検記録、工法、立地、塩害・風雨の影響、設備使用状況に応じて更新時期を仮置きしてください。海沿い、台風の影響、山間部の水分などの地域差は個別確認が必要です。
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部位 |
劣化の兆候 |
見積の取り方 |
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屋根・雨樋 |
雨漏り・ずれ・腐食・排水不良 |
工法と足場費を含めた診断・見積 |
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外壁・開口部 |
ひび割れ・シーリング劣化 |
雨水侵入の原因調査を含める |
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給湯・空調 |
故障・能力低下・水漏れ |
交換だけでなく電源・配管も確認 |
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給排水・床下 |
詰まり・漏水・腐朽・蟻害 |
隠れた部分の調査範囲を明記 |
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耐震・構造 |
傾き・ひび割れ・増改築 |
建築士等へ耐震診断や補強の要否を相談 |
20年の架空修繕工程|「年度別の山」を見えるようにする
次の金額は一般的な工事相場ではありません。工事の集中と予算配分を説明するための架空例です。対象建物の状態や構造は仮定しておらず、実務では専門家の個別見積に置き換えてください。
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経過年 |
架空工事 |
架空支出 |
累計支出 |
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3年目 |
給湯・設備更新 |
40万円 |
40万円 |
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8年目 |
外壁・防水 |
220万円 |
260万円 |
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11年目 |
給排水・設備 |
130万円 |
390万円 |
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17年目 |
屋根・付帯部 |
180万円 |
570万円 |
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20年間 |
合計 |
570万円 |
平均月2.375万円 |
570万円を20年240か月で均等に割れば月約2.4万円ですが、8年目の支出220万円を迎える時点で資金が用意できている必要があります。現金残高がなくても積立額の計算が合う、という状態では工事ができません。積立開始時期、退官予定日、近い年の工事予定を同一の年表に置きます。
20年平均だけでなく「8年目に足りるか」を判定する
先ほどの例で今から月2万円を積み立てると、利息や臨時支出を考慮しない8年目までの積立額は192万円です。3年目に40万円を支出すれば残額は152万円となり、8年目の220万円工事をする際には68万円足りません。月2万円を積み立てている安心感だけでは、実際の工事資金を賄えない例です。
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8年目までの試算 |
架空金額 |
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月2万円×96か月 |
192万円 |
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3年目の設備更新 |
▲40万円 |
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8年目までに残る積立 |
152万円 |
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8年目の外壁・防水工事 |
220万円 |
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工事時点の不足額 |
68万円 |
不足68万円は、別途予備資金を積んでおく、工事予定の優先度を再調整する、点検結果に基づき費用を再見積もりするなどして事前に備えます。安全に関わる工事を無理に繰り延べるという意味ではありません。
費用上振れの検査|相場の予測ではなく「耐える範囲」を設定
570万円の仮定に対し「見積が2割増となる場合」を追加シナリオとして置くと684万円です。差額114万円を現金で調達できるか確認します。2割増は予測値でも公的統計でもありません。個別建物の調査結果で見積が変わることを家計で検証するための仮定です。
住宅履歴情報として工事記録、図面、修繕前後の写真、設備保証、点検結果を残すことは、将来の修繕判断だけでなく、売却を検討する際の建物説明にも役立ちます。建物の現状調査は国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度」の仕組みも参考にしてください。
関連記事のご案内
持ち家の老朽化や修繕、売却を検討する際は、以下の記事も参考にしてください。
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「築30年・40年・50年の古い家でも売れる?」:築年数が経過した住宅の売却と評価について解説しています。
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「価値を上げるリフォームとは?」:住宅の価値を高めるためのリフォームについて解説しています。
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「価値を下げるリフォームとは?」:売却時に不利になる可能性があるリフォームと注意点を紹介しています。
積立が家計に合わない場合の判断
- 工事時期を「安全上の緊急」「近い将来必要」「好み・快適化」に分ける。
- 必要な工事は現場診断と範囲を明示した見積で検証する。
- 月次の積立額に加え、工事年の現金不足額も算定する。
- 退官後の収入見込みを保守的にし、修繕費の上振れを試す。
- 積立と生活費が両立しない場合、不要工事を見送るか、持ち家の継続保有・売却を比較する。
2026年給与ワンポイント|現役給与と退官後収入を分ける
防衛省「令和8年版防衛白書|自衛官の処遇改善」は、2025年度から各種手当の新設・増額など給与面の処遇改善が行われ、2027年度中に自衛官の給与体系の独自改定を目指すことを示しています。ただし将来の改定方針は、各人の2026年の給与額や退官後の収入を保証しません。現役時代の住居費を基準にせず、本人の現在の給与明細、退官時期、再就職契約、年金見込みなどを分けて記入してください。人事院の一般職俸給表を自衛官の給与表と取り違えないようにします。
無料ワークシート|家計と住宅の状態を記録する
「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」の「12 10年・20年修繕計画表」に工事年度・見積・積立残高・不足見込を、「13 住宅維持費年間一覧」に修繕以外の税・保険・管理費を入力してください。予定額には実見積と仮定額を区別して記入します。
よくある質問(Q&A)
Q1.戸建住宅の修繕費は毎月何万円積み立てれば十分ですか?
建物の状態、工事の時期、現在の積立残高で異なります。将来の工事費見積と支払年の残高から逆算してください。
Q2.工事の相場をそのまま自宅へ使えますか?
構造、工法、足場、劣化状況が異なります。相場の概算は検討の入口にとどめ、現場調査に基づく複数見積を確認します。
Q3.退職金で外壁・屋根の工事をまとめて払えば安心ですか?
生活費・住み替え費・予備資金を残せるかが先です。安全工事と嗜好工事を分けて優先順位を決めます。
Q4.20年間の積立額が工事費を超えれば問題ありませんか?
問題がないとは限りません。工事が集中する年に必要現金があるか、別途予備費を確保できるかを検証します。
Q5.住宅を売ると決めたら修繕積立は不要ですか?
売却前までの安全確保、劣化防止、管理支出が必要な場合があります。決済までの費用を売却資金計画に計上してください。
根拠資料・確認日
公的制度・公式資料および既存記事の確認基準日:2026年10月10日。制度・補助、契約、税務、保険の取扱いは公開時点で再確認してください。架空の費用・家計・残債は実際の相場・予測・個別事例ではありません。
執筆/監修 株式会社陸自不動産 小松野美貴哉