第3章 3-1 築30年・40年・50年の持ち家に退官後も住めるか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
築30年・40年・50年の家でも、退官後に住み続けられる可能性はあります。ただし「今まで住めた」ことは「退官後も安全に、払える費用で住み続けられる」ことの証明にはなりません。判断の順序は、①人命に関わる耐震・雨漏り・腐朽等の安全性、②実際の修繕費、③退官後の居住年数、④税・保険・光熱・移動を含む保有費、⑤住み続けられない場合の移転先です。年齢だけで解体を決めず、建物の現況から判断してください。
最初に示す判断基準|住み続ける前に「危険と資金」を可視化する
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5つの判断項目 |
居住継続の基準 |
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最大損失額 |
必要な安全工事・修繕費、住めなくなった場合の仮住まい・転居費、保有継続の税保険など。現況調査・見積もりがない限り上限額は確定できません。 |
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成功条件 |
安全性と生活動線を確認し、必要な工事・退官後生活費・予備費を無理なく負担できること。 |
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失敗条件 |
危険な劣化を放置し、退官後に高額改修が集中、現金不足や一時退去を招くこと。 |
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損切り基準 |
耐震性・構造安全性が不明、見積額が生活予備資金を侵食、住み続ける期限が曖昧なら大型工事・契約を停止。 |
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実行しない選択肢 |
現況調査だけ先に実施する、応急修繕で検討期間を確保する、住み替え・賃貸を比較する。 |
「築年数」は診断結果ではない|30年と50年を同じ基準で裁かない
築30年で漏水・シロアリ被害が進んだ建物と、築50年で維持履歴が明確な建物は、年数だけでは優劣を決められません。耐震設計の前提、構造、基礎、外壁、屋根、配管、地盤、増改築歴、排水経路を個別に確認する必要があります。国土交通省は「住宅は若返る?長く、快適に住まいを保つ」で、屋根・壁の内部や給排水管のような見えにくい部位の劣化を指摘し、点検・補修・更新を計画的に行う必要性を説明しています。
特に「退官前だから工事を先送り」「退職金が出るまで直さない」といった判断は、雨漏りの進行・木材腐朽・漏電などの問題を見落とす可能性があります。逆に、古いという理由だけで全面改修すれば、居住予定年数の短さに対して費用が過大になる場合もあります。
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調査する部位 |
危険信号 |
確認者・判断 |
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基礎・構造・耐震 |
大きなひび、傾き、腐朽、過去の増築 |
建築士等に構造・耐震診断の要否を相談 |
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屋根・外壁・開口部 |
雨染み、雨樋破損、外壁浮き |
専門業者が漏水範囲と原因を確認 |
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床下・給排水 |
水漏れ、白蟻跡、沈下、配管腐食 |
床下・水道設備の点検、部分更新見積 |
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室内と生活動線 |
急な階段、浴室段差、狭いトイレ |
退官後の暮らし方に照らした改修範囲 |
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土地・周辺 |
擁壁・斜面・浸水、道路条件 |
行政資料と個別の現地調査で確認 |
旧耐震かどうかは建築時期の確認から。新耐震=無条件に安全、ではありません
国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」は、1981年の基準強化前に建てられた建物には耐震性が不十分なものが多く、耐震診断と必要な耐震改修を促しています。ただし登記上の建築年だけで「旧耐震」「安全」の最終判定はできません。建築確認日、着工時期、工事内容、増改築履歴の照合が必要です。
旧耐震期の住宅は優先的に耐震診断を検討します。一方、基準改正後でも経年劣化や工事内容による危険は残ります。住宅の売買で使われる国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度」による建物状況調査は、一定の方法基準に従う調査であり、耐震性の全てを保証する診断ではありません。必要な耐震診断・詳細調査を区別しましょう。
築古住宅を「直せるか」と「その家で生活できるか」は別に評価する
修繕業者が「直せます」と説明した場合でも、退官後の暮らしに適するとは限りません。長い階段、車がなければ通院できない立地、冬の寒さ、家族が離れた居所、再就職先への距離などは、建物改修だけで解決しないことがあります。住まいに求める条件を、現在の生活と退官後の生活で分けてください。
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評価項目 |
住み続ける条件 |
住み替えを比較すべき条件 |
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安全性 |
耐震・雨漏り等の課題が解消可能 |
工事費が多額で安全性の確保が難しい |
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資金 |
最低限の修繕後も生活資金が残る |
資金の大半を建物に固定してしまう |
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利用期間 |
10~20年程度の具体的居住予定 |
数年内に生活拠点が動く可能性 |
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生活圏 |
通院・買物・公共交通が使える |
車の運転継続を前提とし過ぎる |
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出口 |
貸す・売る・親族利用の可能性を把握 |
別の家に移る時の資金が不足する |
架空試算|改修費300万円を「10年の生活費」に置き換えるとどう見えるか
以下は家の工事費相場ではなく、費用と居住予定年数を比較するための仮定です。安全性を回復するための工事300万円を一度支払い、その後の追加修繕・税・保険は別に発生するとします。
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その家に住む年数(仮定) |
工事300万円の年換算 |
月換算 |
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5年 |
年60万円 |
月5.0万円 |
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10年 |
年30万円 |
月2.5万円 |
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20年 |
年15万円 |
月1.25万円 |
月換算が安いから購入・改修すべきだという意味ではありません。安全確保に必要な工事と、内装をきれいにする嗜好工事を混ぜず、見積を分けるのが重要です。たとえば5年後に転居する見込みなら、300万円に加えて固定資産税・保険・再転居費・残債なども考慮します。売却代金の見込みを希望値のまま置かないでください。
私の場合
持ち家を所有し続けるか、売却するかは、築年数だけで判断するものではありません。特に定年退官後は、建物の状態や修繕費用だけでなく、老後の生活設計も重要な判断材料になります。
住み続けることが負担になるのであれば、売却も選択肢の一つです。
売却を検討する際は、「築30年・40年・50年の古い家でも売れる?」、「築古住宅は中古住宅として売る?古家付き土地として売る?」を参考にしてください。
また、修繕やリフォームを検討する場合は、「価値を上げるリフォームとは?」も参考になります。
危険を先送りしないための実行順序
- 図面・確認済証・工事履歴を探し、建物の建築時期と構造を確認する。
- 雨漏り・腐朽・耐震等の懸念があれば建築士等に適切な調査を依頼する。
- 安全工事、維持工事、快適化工事を分けて複数の見積を取る。
- 退官日から少なくとも10年間の現金収支と居住予定年数を照合する。
- 改修・部分修繕・住み替えの3案で、費用だけでなく次の住居も比較する。
2026年給与ワンポイント|現役給与と退官後収入を分ける
防衛省「令和8年版防衛白書|自衛官の処遇改善」は、2025年度から各種手当の新設・増額など給与面の処遇改善が行われ、2027年度中に自衛官の給与体系の独自改定を目指すことを示しています。ただし将来の改定方針は、各人の2026年の給与額や退官後の収入を保証しません。現役時代の住居費を基準にせず、本人の現在の給与明細、退官時期、再就職契約、年金見込みなどを分けて記入してください。人事院の一般職俸給表を自衛官の給与表と取り違えないようにします。
無料ワークシート|家計と住宅の状態を記録する
「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」内の「12 10年・20年修繕計画表」「13 住宅維持費年間一覧」を使い、修繕時期・優先順位・見積額・税保険料を年別に転記してください。
よくある質問(Q&A)
Q1.築50年でもそのまま住めますか?
築年数だけでは可否を判定できません。構造・耐震・雨漏り・給排水・生活動線を専門家と確認し、必要工事と居住予定年数を比較します。
Q2.1981年以降の家なら耐震診断は不要ですか?
不要とは断定できません。確認時期・増改築・経年劣化等を確認し、必要に応じて専門家の診断を検討してください。
Q3.建物状況調査を受ければ耐震性能が証明されますか?
一般に建物状況調査と専門的な耐震診断は目的・範囲が異なります。調査内容を確認し、必要なら別途耐震診断を依頼してください。
Q4.修繕しても数年で退官後の住居を変える予定です。全面改修は有利ですか?
安全対策と嗜好工事を分け、短い居住期間で工事負担に耐えられるか比較します。工事費の回収を保証するものではありません。
Q5.古い家は先に壊してから売るべきですか?
解体費・土地の用途・建物利用可能性・税務条件を確認するまでは決めない方がよい場合があります。中古住宅・古家付き土地・解体を比較します。
根拠資料・確認日
公的制度・公式資料および既存記事の確認基準日:2026年10月10日。制度・補助、契約、税務、保険の取扱いは公開時点で再確認してください。架空の費用・家計・残債は実際の相場・予測・個別事例ではありません。
執筆/監修 株式会社陸自不動産 小松野美貴哉