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〒856-0805 長崎県大村市竹松本町840番地9号2F

第4章 4-2 定年退官後は持ち家でなければいけない?|賃貸・二拠点・所有を比較

50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

 

始めに結論

定年退官後の住居は持ち家である必要はありません。「どの地域に生活の中心を置くか」「2つの拠点を維持する理由があるか」「両拠点の費用を負担できるか」を確認し、賃貸・所有・二拠点から選びます。所有権があること自体は、通院や買物の便利さ、再就職地への通勤、老後の生活資金を保証しません。二拠点は柔軟性を増しますが、二重の支出を伴うため、明確な目的と終了条件が必要です。

 

 

先に5条件|「持ち家が安心」という印象を数字で検査する

項目

判断の基準

最大損失額

賃貸は賃料・更新・退去、持ち家は修繕・固定資産税・売却損、二拠点は双方の合計。所有物件の将来価格等が未確定なら絶対的な上限は未算定。

成功条件

生活動線・家族の希望・現金収支・転居自由度が折り合い、退官後に無理なく生活拠点を運営できる。

失敗条件

持ち家があるのに住めない、二拠点の費用が想定を超える、家族の生活圏と本人の生活圏が衝突。

損切り基準

二拠点維持の目的が曖昧、年間支払額が予算を超える、空ける家の管理者が不在なら移動・契約を保留。

実行しない選択肢

現状維持、短期賃貸で移住先を試す、家を売らずに数か月単位で居住地を検証。

 

 

 

家を持っていても「そこで暮らし続ける」義務はない

勤務時代に買った家が、自分にとって一番安全な退官後の住まいであるとは限りません。所有と居住を分けると選択肢が増えます。自宅を保有したまま新しい勤務地の近くに賃貸する、所有住宅を売って生活圏の近くで借りる、持ち家へ戻って暮らす。どの案にも利点と負担があります。

一般的な賃貸と購入の長期費用は「賃貸と住宅購入は20年間でどちらが得?」が具体的に整理しています。本稿では退官前後の勤務地変更と、所有する家の場所・家族の拠点が一致しない問題に焦点を当てます。購入を急がない家庭条件は「家を買わない方がよい家庭とは?」も参照してください。

 

 

私の場合|持ち家と賃貸の総費用を比較する

定年退官後の住まいを考える際は、持ち家と賃貸、それぞれの総費用を比較することが重要です。

持ち家の場合は、住宅ローンの返済額だけでなく、固定資産税、火災保険料、修繕費、維持管理費などが必要です。ローン完済後も維持費は発生します。

賃貸の場合は、毎月の家賃、共益費、更新料、火災保険料、引っ越し費用などが必要です。住み続ける限り、原則として家賃の支払いが続きます。

比較する際は、今後20年、30年といった同じ期間で総費用を計算し、持ち家の資産価値や売却可能性も考慮する必要があります。

重要なのは、毎月の支払額だけでなく、退官後の生活全体でどちらが経済的に無理のない選択なのかを判断することです。

 

 

 

所有・賃貸・二拠点を「生活機能」と「資金」で比較する

比較軸

所有住宅に住む

賃貸で暮らす

所有+別の賃貸

主な利益

住まいの利用・改修を計画しやすい

勤務地・家族事情の変化へ対応

家族等の拠点を残し生活場所を変えやすい

月々・年々の支出

住宅ローン、税、保険、修繕、設備更新

賃料、管理費、更新・保証関連費用

所有側の支出+賃貸側の支出+二拠点往来

移動の自由

売却・賃貸化・空き家管理が課題

契約条件による退去・移動

柔軟性がある反面、管理・連絡の負担

退官後の注意

仕事と通院への距離

賃貸契約・更新条件、将来の賃料

空き家状態、残債、保険・維持費、目的の期限

 

家の値段より先に「医療・買物・移動」が続くかを確認する

国土交通省「高齢期の住まいの改修ガイドライン」は、外出のしやすさ、浴室・トイレ、主要な移動経路、温熱環境などを確認項目に挙げています。たとえ持ち家の返済が終わっていても、急坂のある地域で車以外の交通手段が乏しい場合、生活継続のための支出が増える可能性があります。反対に駅や医療機関に近い賃貸住宅でも、段差や安全性、契約条件を無視してはなりません。

最初に必要なのは「持ち家か賃貸か」という分類ではなく、本人・同居予定者がいつまで、どの生活圏で暮らすかです。通院や買物、家族への連絡、再就職先への移動時間を確認してから建物種別を決めます。『今家を買うべき?数年待つべき?』という判断は既存記事でも扱っています。

 

 

架空試算|同じ10年間でも二拠点は二重の支出となる

比較方法を示すための架空例です。現金で保有する住宅の税・保険・通常修繕を年35万円、大型修繕210万円/10年、賃貸住宅を月9万円+共益費1.5万円、初期費40万円と仮定。二拠点では所有住宅の支出に加えて会社近くの賃貸を月7万円(賃料等)、初期費35万円とします。水道光熱費・往来費・住宅売却価値・賃貸の更新料・家賃変動は算入していません。

10年間の支出(架空)

持ち家で暮らす

賃貸へ移る

持ち家+賃貸

所有住宅:税・保険・維持

350万円

なし(売却等の別処理が必要)

350万円

大型修繕

210万円

なし

210万円

賃貸費用

なし

1,260万円

840万円

賃貸初期費用

なし

40万円

35万円

単純合計

560万円

1,300万円

1,435万円

 

賃貸への転居案では「元の家を売る・貸す・保有する」の区分が未確定なため、試算をそのまま優劣判定へ用いてはいけません。持ち家は保有資産が残る一方で、将来売却額は未知数です。二拠点の費用は、所有住宅を残す意味と、生活場所を変える利益を家族で共有できる場合に限って、十分な比較価値があります。

 

 

二拠点を続けるなら「終了条件」を最初に決める

二拠点の目的

見直す時点

終了・継続の判定

再就職先への通勤

再就職契約更新・退職時

勤務先変更と通勤費を比較

家族の生活拠点を維持

家族の転居・進学・独立

家族の現実の利用意思を再確認

住宅を一時的に残す

固定資産税納付・大型修繕前

保有・賃貸化・売却を試算

地域を試す

当初の賃貸契約期限前

通院・買物・住み心地と費用を確認

 

空き家状態の持ち家には換気、雨漏り、漏水、樹木、災害対策等の管理が必要です。住宅ローン返済中なら転居後の利用条件や賃貸化の可否を金融機関に確認してください。住宅の位置を離しただけで融資条件まで自動的に変更できるわけではありません。

 

 

実行判断|「住みたい場所」と「所有したい場所」を別に書く

  • 本人・家族それぞれの勤務先・通院先・生活圏を地図に記入する。
  • 所有住宅の実際の税保険・修繕、ローン残債を年額化する。
  • 賃貸の契約金、月額総額、更新、退去、移動費を見積もる。
  • 二拠点の場合は継続理由と終了条件を家族と共有する。
  • 高齢期の生活動線が成立しない場合は費用だけで持ち家回帰を決めない。

 

 

2026年給与ワンポイント|処遇改善と退官後収入は別

防衛省「令和8年版防衛白書・自衛官の処遇改善」は、2025年度から30を超える手当等の新設・引上げなどを含む処遇改善が実現したと説明し、2027年度に自衛官の給与体系の独自改定を目指す方針を示しています。一方、同白書「新たな生涯設計の確立」が述べる若年定年後の所得低下を、現役時代の給与改善によって解消済みとは扱えません。2026年の住宅判断には階級・号俸・手当・控除を反映した本人の給与明細を使い、退官日以降は確定した再就職条件だけを確定収入として計上してください。一般職国家公務員の俸給表を自衛官の給与表と混同しません。

 

 

無料ワークシート|判断を現金と生活条件に落とし込む

「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」(公式PDF)の「16 所有・賃貸比較表」「18 再就職待機判断表」「19 夫婦二人の住居条件整理表」で、生活拠点の選択と家族の居住条件、二拠点の終了時期を見える化してください。

 

 

よくある質問(Q&A)

Q1.退官したら持ち家へ戻らなければいけませんか?

一般的な住まい方として義務ではありません。所有住宅に戻る・賃貸に住む・二拠点を続ける選択は生活条件で比較できます。個別の住宅ローン契約や公的な住宅制度は別途確認が必要です。

 

Q2.二拠点生活は住宅費が二倍になりますか?

必ず二倍とは限りませんが、両住居の税・保険・家賃・管理・移動等が重なるため、支出項目が増える点に注意します。

 

Q3.持ち家があれば老後の住居費はゼロですか?

いいえ。固定資産税、保険、修繕・設備更新が続き、住宅ローンが残れば返済も必要です。

 

Q4.住居費の安い家を選べば十分ですか?

通院・買物・交通の動線と家族の生活が成立するかも確認してください。

 

Q5.自宅を残して遠方の賃貸に住むことはできますか?

生活形態として可能ですが、住宅ローン契約上の使用条件や税務・保険・管理を個別に確認します。

 

 

 

 

 

一次資料・確認日

公的資料・関連既存記事の確認日:2026年10月10日。数値例は架空の前提による計算であり、特定物件の相場、将来の予測、代表本人の取引実績を示しません。融資・法律・税務等の個別条件は契約書と専門窓口で確認してください。

 

 

 

 

執筆/監修

株式会社陸自不動産 小松野美貴哉