第1章 1-5 退官後の再就職先が未定でも家を買ってよいか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
再就職先が未定でも住宅購入が必ず禁止されるわけではありません。ただし「退官後に住む地域」「再就職後の手取り額」「就職が決まるまでの生活費」が確定していない段階では、購入延期と比較したうえで判断してください。勤務地も収入も見通せない場合は、購入を急がない方が合理的です。
再就職前の家選びには、価格より大きい「立地の不確実性」がある
定年退官が近づくと、退官後に落ち着いて暮らす住宅を確保したいと考える方がいます。しかし、再就職先が未定の状態では、通勤時間や交通費、仕事を続ける予定年数が定まらず、購入候補地が将来の生活に合うかを評価しきれません。購入時に気に入った家であっても、勤務先が離れた地域になれば二重生活費や再転居が生じる可能性があります。
大切なのは「就職が決まるまで絶対に買わない」という一律の決まりではありません。家族の居住地がすでに固定されているか、再就職先候補が何地域あるか、収入が低い場合でも住宅費を支払えるかを分けて確認することです。
購入する・条件付きで買う・延期するの三案で比較する
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案 |
判断しやすい条件 |
契約前に確認する事項 |
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A|今購入する |
家族の居住地が確定し、就職地に依存せず家計が成立 |
低収入ケースと移動費を含めて赤字がないか |
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B|条件が固まった後に購入 |
候補勤務地が絞れ、採用・収入条件の確定が近い |
購入期限を設けず、必要書類を先に準備 |
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C|購入を延期する |
勤務地・給与・開始時期が全て未定 |
賃貸継続費、引越費、現金残高を試算 |
選択肢Aを選ぶときも、給与が未確定なら「現役時と同額」「減収」「再就職まで無収入」の三条件で収支を計算してください。融資の審査が通ることだけで、退官後の家計の安全性が証明されるわけではありません。
数字の置き方|再就職が6か月遅れる架空例
【架空条件】退官後の最低生活費と住居費を合わせて月28万円、再就職までの待機期間を6か月、購入時に使える現金を400万円と仮定します。待機費は28万円×6か月=168万円です。購入時の頭金と諸費用へ300万円を使うと、残りは100万円となり、待機費の168万円に68万円不足します。
上記の数字は一般家庭の平均値でも代表本人の資金額でもありません。実際は雇用保険等の対象関係、退職手当、家族収入、社会保険・税、引越費等を個別に確認してください。再就職が早期に決まる可能性があっても、決定前の見込収入を確定額として借入返済へ充当しないことが重要です。
購入時期を迷う場合は「今家を買うべき?数年待つべき?」で、早期購入と待機の条件を整理しています。購入しない選択の合理性は「家を買わない方がよい家庭とは?」で確認できます。年代ごとの判断の違いを把握するには「30代・40代・50代で家の買い方はどう変わる?」を参照してください。
私の場合
私は定年退官後、不動産実務に携わり、現役時代とは働き方と生活拠点が変わりました。住宅の立地は、再就職・通勤条件が見える前後で判断も変わり得ます。
退官後の働き方と生活拠点が変わった経験は、再就職前に物件を決める場合の立地判断が簡単ではないことを示しています。ただし、私自身の再就職状況を読者のモデルケースとして断定するものではありません。自分の家族構成や仕事の候補地に応じて検討してください。
防衛省の支援制度と、本人の採用条件は分けて確認する
防衛省「退職自衛官に対する再就職支援」では職業訓練などの支援内容を案内しています。支援制度があっても、希望地域での就職、特定の給与額、退官直後の就職開始が保証されるわけではありません。
防衛省「令和8年版防衛白書:新たな生涯設計の確立」は、若年定年退職後の一般的な所得水準の低下と、2026年度中に再就職支援の対象期間を拡充する方針を掲載しています。「2026年度中に拡充」は資料上の方針として扱い、本人がいつ、どの条件で利用できるかは担当窓口で確かめてください。
2026年給与ワンポイント|給与改善は再就職後の賃金ではない
防衛省「令和8年版防衛白書:自衛官の処遇改善」には、2025年度からの給与改善と2027年度の自衛官給与体系独自改定を目指す方針が示されています。現役中の2026年給与と再就職後の給与は異なるため、住宅購入の返済表には実際の給与明細と採用条件通知書などで確認できた金額を区別して入力してください。
購入を見送る具体的な判断基準
判断を止める条件: 再就職地が複数地域に分かれる、採用時期の見通しが立たない、低収入ケースで月次赤字になる、購入後の現金が待機期間の生活費を下回る、家族が退官後の居住地で合意できていない場合は、購入延期を優先して比較します。
無料ワークシート|就職先と住む場所を同時に比較する
「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」(PDF)の「05 再就職先と住宅立地比較表」「18 再就職待機判断表」を使用してください。勤務先候補地、通勤条件、収入の確定度、待機資金を書き分けられます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 再就職先が決まる前でも住宅ローン審査へ申し込めますか?
A.申込自体の可否は金融機関と商品・年齢・収入の条件次第です。審査に通っても退官後の返済能力を保証するものではありません。
Q2. 自衛隊の再就職支援を受ければ希望する地域で働けますか?
A.地域と採用条件が保証されるわけではありません。防衛省の再就職支援案内を確認し、個別の就職先候補について担当窓口で確認してください。
Q3. 再就職が決まるまで何か月分の生活費を残せばよいですか?
A.全員に共通する月数は定められません。就職開始時期がずれた場合の複数シナリオを作り、各期間の生活費、住居費、税・保険負担を積み上げます。
Q4. 再就職先が未定なら必ず賃貸の方が有利ですか?
A.必ずしも有利とは限りません。家族の居住拠点が確定し、低収入ケースでも返済できる場合には購入が成立することがあります。購入と賃貸の総支出、引越しの柔軟性を比較してください。
Q5. 退官後の給与は現役給与から何割減で計算すべきですか?
A.個別の減収率は確定できません。防衛省の令和8年版防衛白書が説明する一般的な所得構造を参考にしつつ、実際の求人条件や内定通知等で本人の数字を更新してください。
出典・情報確認日
情報確認日:2026年10月10日。法令・制度・金融商品・記事リンクは公開時にも最新情報を再確認してください。本文内の金額例はすべて明示した架空条件による試算です。
※ 本稿は個別の融資承認、投資成果、再就職先の決定を保証するものではありません。融資条件は申込金融機関、制度適用や本人の勤務条件は各担当窓口へご確認ください。
執筆/監修 株式会社陸自不動産 小松野美貴哉