第1章1-2 50代自衛官は住宅ローンの金利上昇に耐えられるか?
50代になった自衛官へ~これから「家」をどうする?

始めに結論
現在の金利だけを見て「返せる」と判断してはいけません。金利上昇、退官後の収入減少、住宅の修繕支出が同時に発生する条件で、毎月の収支と現金残高が耐えられるかを確かめる必要があります。
50代自衛官の返済計画は、金利より先に「退官時点」を置く
現役中は給与で返済できても、退官後に同じ手取り額が続くとは限りません。返済が長期化するほど、再就職収入の増減や、建物・設備の修繕を負担する時期が住宅ローン返済と重なります。したがって、現役中の返済比率だけを見ず、退官直後の数年間を別の家計期間として検証します。
防衛省の令和8年版防衛白書「新たな生涯設計の確立」では、若年定年退職者の一般的な所得水準について、退職後は退職時の7割強となり、60歳時点でさらにその7割に低下する構造が説明されています。個人ごとの減収率を示す数字ではなく、計画時に収入減を織り込む必要性を示す資料です。
金利・収入・修繕を同時に動かす三重ストレステスト
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確認する変数 |
基本ケース |
厳しいケース(架空) |
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住宅ローンの金利 |
年1.5% |
年3.0% |
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借入条件 |
2,000万円・20年 |
借入残高と期間が同じと仮定 |
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退官後の手取り収入 |
月35万円 |
月28万円 |
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住宅の定期支出 |
月2万円 |
月2万円 |
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将来修繕への積立 |
月1万円 |
月1万5,000円 |
【計算例・架空条件】2,000万円を20年、元利均等・毎月返済・ボーナス返済なしで計算すると、年1.5%では月約96,509円、年3.0%では月約110,920円です。差額は月約14,410円となります。金利を途中変更する実際の変動金利商品では、残高・残期間・返済額見直し条項で結果が変わります。表は金利上昇が必ず起きるという予測ではありません。
厳しいケースで「生活費19万円・返済約11.1万円・住宅の定期支出2万円・修繕積立1.5万円」と仮定すると、月の支出は約33.6万円です。手取り28万円との差額は毎月約5.6万円の赤字となり、頭金を多く入れていたとしても、維持できる計画ではありません。税・保険・医療費等の計上漏れにも注意が必要です。
金利の予測はせず、返済契約の条件を確認する
変動金利なら「基準金利の見直し」「返済額の見直し」「未払利息の扱い」、固定金利なら「固定期間と終了後条件」を契約資料で確認します。返済が増える程度を把握する作業と、今後の市場金利を当てる作業は別です。銀行の商品説明書・返済予定表を基準にしてください。
「金利上昇・収入減少・修繕が同時でも住宅ローンを返せる?」では、負担を三つ同時に変える考え方を扱っています。平常時の家計余力を求める場合は「手取り収入から住宅購入予算を逆算する方法」へ進み、購入以外の選択も比べる場合は「賃貸と住宅購入は20年間でどちらが得?」で住居総額を比較してください。
現役中の資産運用経験から感じること
私は現役中に不動産4棟の運用を経験しました。所有していることと、将来まで無理なく持ち続けられることは同じではありません。住宅ローンと投資用不動産の借入条件は異なりますが、収入だけでなく維持・修繕の支出と出口をあわせて見る必要がある点は共通します。
公的な制度条件と2026年給与ワンポイント
住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」では、2026年4月1日現在、申込時の年齢は原則満70歳未満、借入期間の上限は原則「80歳-申込時年齢(端数切上げ)」と35年の短い方と案内されています。固定金利商品についての条件であり、民間の変動金利型ローン全体へ一律に適用してはいけません。
2026年の給与判断には防衛省「令和8年版防衛白書:自衛官の処遇改善」を参照します。2025年度からの処遇改善が記載されていますが、2027年度の給与体系独自改定は「目指す」段階です。個人の2026年手取り額は本人の給与明細で確認し、退官後の返済余力へ未確定の増額を加算しないでください。
収入・支出の長期比較には金融庁「ライフプランシミュレーター」も活用できます。入力条件によって試算結果が変わり、将来の家計を保証するものではありません。
購入・借換えの判断を止める境界線
判断を止める条件: 金利上昇と減収を同時に置くと赤字になる、修繕積立を月次収支から捻出できない、退官後の仕事が未定なのに現役給与を全期間に適用している、のいずれかに該当する場合は物件価格や借入額を下げるか、購入自体を再検討してください。
無料ワークシートで退官後まで計算する
「50代自衛官のための住まいを考えるワークシート」(PDF)の「02 退官後収支表」と「04 完済年齢確認表」を使用し、退官直後と60歳以降の家計を別欄で比較してください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 変動金利は今後何%まで上がりますか?
A.将来の金利水準を断定する根拠はありません。金利が一定幅上がる複数の仮定を置き、返済契約の見直し条項に沿って試算してください。
Q2. 現役中の返済負担率が低ければ安心ですか?
A.十分ではありません。50代は退官後に収入の区切りが生じるため、退官後の家計と修繕資金の確保を別に調べる必要があります。
Q3. 金利1.5%と3%では返済額がどの程度変わりますか
A.2,000万円・20年の架空条件では、月約96,509円と月約110,920円です。実際の変動金利契約では金利変更時点の残高と約款が必要です。
Q4. フラット35は全ての人が35年間借りられますか?
A.いいえ。2026年4月1日現在の公式条件は、申込時年齢や借入期間、返済負担率などに制限を設けています。実際の利用条件は個別に確認してください。
Q5. 修繕費を見込むと赤字になる場合はどうすべきですか?
A.積立額をゼロにして帳尻を合わせず、購入価格の見直し、借入額の縮小、賃貸継続等を比較します。修繕の必要額は物件状態と見積書で個別に調べます。
出典・情報確認日
情報確認日:2026年10月10日。法令・制度・金融商品・記事リンクは公開時にも最新情報を再確認してください。本文内の金額例はすべて明示した架空条件による試算です。
・住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在)
※ 本稿は個別の融資承認、投資成果、再就職先の決定を保証するものではありません。融資条件は申込金融機関、制度適用や本人の勤務条件は各担当窓口へご確認ください。
執筆/監修 株式会社陸自不動産 小松野美貴哉