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③ 住宅ローン残高と現在の市場価格を確認する|家を売れば住宅ローンを完済できるか?

住宅ローンの返済が苦しくなったら最初に何を確認する?

 

「購入したときに3,000万円だったから、今も同じくらいで売れるだろう」「不動産会社の査定価格が住宅ローン残高を上回ったから、問題なく完済できるだろう」と考える人もいます。しかし、購入時の価格、現在の市場価格、不動産会社の査定価格、売主が決める売出価格、実際の成約価格は、それぞれ意味が異なります。また、売却代金の全額を住宅ローンの返済へ充てられるとは限りません。住宅ローンを完済できる可能性を確認するには、完済時に必要となる金額、想定される成約価格、売却諸費用を分けて整理し、資金計画として比較する必要があります。

 

家を売れば住宅ローンを完済できるか、どの数字を比べれば判断できますか?

初めに結論

家の売却によって住宅ローンを完済できる可能性を確認するには、現在の住宅ローン残高だけでなく、売却予定日に金融機関へ支払う完済必要額、自宅の想定成約価格、売却時に見込まれる諸費用を分けて確認します。不動産会社の査定価格は、成約価格を保証する金額ではありません。完済必要額は借入先金融機関、市場価格は不動産会社へ確認し、想定成約価格から諸費用を差し引いた概算額と完済必要額を比較する必要があります。

 

最初に数字の意味を分けて整理する

住宅ローンが残る家の売却では、次の数字を混同しないことが重要です。

数字・用語 意味
住宅ローン残高 ある時点で残っている借入残高。確認方法は金融機関や融資商品によって異なる
完済必要額 実際の完済日に金融機関へ支払う必要がある金額。残高証明書の金額と一致するとは限らない
査定価格 不動産会社が物件調査や市場資料を基に示す価格判断。成約を保証する金額ではない
売出価格 売主が市場へ提示する募集価格。査定価格と同額である必要はない
成約価格 売主と買主が合意し、売買契約が成立した価格
売却諸費用 仲介手数料、登記関係費用、印紙税、金融機関の手続費用など、個別案件で発生する費用

査定価格が住宅ローン残高より高い場合でも、実際の成約価格、完済必要額、売却諸費用によって、完済できるかどうかが変わります。

 

現在の住宅ローン残高を確認する

最初に、現在の住宅ローン残高を確認します。当初借入額や記憶上の金額ではなく、借入先金融機関が提供する最新情報を確認してください。

確認方法の例として、次の資料やサービスがあります。

  • 返済予定表

  • 残高証明書

  • 金融機関の残高照会

  • インターネット上の契約者向けサービス

  • 借入先金融機関への問い合わせ

資料の名称や利用方法は、金融機関や融資商品によって異なります。

住宅金融支援機構は、対象融資について借入金残高の照会や残高証明書の発行手続を案内しています。ただし、住宅金融支援機構の取扱いを、民間金融機関が提供する全ての住宅ローンへ一律に当てはめることはできません。

 

 

住宅ローン残高と完済必要額は分けて確認する

残高証明書などに記載された住宅ローン残高が、そのまま売却予定日の完済必要額になるとは限りません。

住宅金融支援機構は、対象となる個人住宅融資について、繰上返済日の直前の返済日の翌日から繰上返済日までに発生する経過利息を支払う場合があると案内しています。住宅金融支援機構「繰上返済(個人住宅融資の場合)」

民間金融機関の住宅ローンでは、繰上返済や完済に関する手続、費用、申出期限などが異なる可能性があります。

売却予定日が具体化した段階では、借入先金融機関へ次の事項を確認してください。

 

 

  • 完済予定日時点の完済必要額

  • 完済手続の申出期限

  • 繰上返済に関係する費用の有無

  • 抵当権抹消関係書類の交付方法

  • 売買代金によって完済する場合の手続

不動産会社が金融機関に代わって完済必要額を確定することはできません。

 

現在の市場価格を確認する

自宅の現在の市場価格は、不動産会社による物件調査、周辺の取引事例、販売中の競合物件、土地と建物の個別条件などを踏まえて確認します。

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格、成約価格、地価公示などの価格情報を確認できます。

ただし、公表された取引情報は、個別物件の査定価格を直接示すものではありません。同じ地域の不動産でも、次の条件によって価格が異なる場合があります。

 

  • 土地面積・建物面積

  • 築年数・建物の状態

  • 接道状況・道路幅員

  • 駐車条件

  • 周辺環境・利便性

  • 境界や越境の状況

  • 増築や未登記部分の有無

  • 売主・買主の取引事情

公表データが少ない地域や物件種別では、十分な比較資料を確認できない場合もあります。データ不足を推測で補わず、現地調査や個別査定を行う必要があります。

 

 

購入時の価格は現在の市場価格ではない

購入時の価格には、購入時点の土地価格、建築費、市況、新築時の価値、販売経費などが反映されています。

一方、売却価格は、現在の市場環境と対象物件の状態を基に検討されます。そのため、購入価格を現在の売却価格として扱うことはできません。

築年数だけを使って一定割合を機械的に差し引く方法も、個別物件の市場価格を確定する方法にはなりません。土地条件、建物状態、維持管理、需要、競合物件などを含めた確認が必要です。

 

査定価格・売出価格・成約価格の違い

査定価格

不動産会社が物件調査、市場データ、周辺事例などを踏まえて示す価格判断です。一定期間内の成約を保証する金額ではありません。

 

売出価格

売主が販売開始時に市場へ提示する募集価格です。売主の希望、査定内容、販売戦略、売却時期などを踏まえて決定します。

成約価格

売主と買主が条件交渉を行い、最終的に合意した売買価格です。査定価格や売出価格と一致するとは限りません。

したがって、「査定価格が住宅ローン残高を上回ったから完済できる」とは断定できません。資金計画では、価格交渉や市場反応も考慮した想定成約価格の幅を検討する必要があります。

 

売却時に見込まれる諸費用を確認する

不動産を売却する場合、売却代金の全額を住宅ローン返済へ充当できるとは限りません。

個別案件で発生する可能性がある費用には、次のような項目があります。

  • 仲介手数料

  • 売買契約書等に関係する印紙税

  • 抵当権抹消などの登記関係費用

  • 繰上返済・完済手続に関係する費用

  • 測量・境界確認費用

  • 解体費用

  • 残置物処分費用

  • 引越し費用

  • 譲渡所得などに関する税負担

仲介手数料には、国土交通省告示に基づく上限があります。また、価格800万円以下の宅地・建物には特例が設けられているため、「売買価格×3%+6万円+消費税」という簡易式だけを、全ての取引に無条件で使用することは適切ではありません。国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」

各費用の発生有無や金額は個別条件で異なります。登記関係は司法書士、金融機関の手続費用は借入先金融機関、税務上の個別判断は税理士・税務署等へ確認してください。

 

完済可能性を確認するための概念式

資金計画を整理する際は、次の概念式を使用します。

想定成約価格 − 売却時に見込む諸費用 = 住宅ローン返済へ充当できる金額の概算

算出した概算額と、借入先金融機関へ確認した完済必要額を比較します。

税金や引越し費用などは、支払時期や取扱いが決済日と異なる場合があります。そのため、計算結果を「最終手取り額」と断定せず、「住宅ローン返済へ充当できる金額の概算」または「資金計画上の概算」として扱います。

 

説明用の仮定例

以下は仕組みを説明するための仮定例であり、実際の査定価格、完済必要額、売却諸費用、市場相場を示すものではありません。

ケース 想定成約価格 概算諸費用 返済へ充当できる概算額 完済必要額 整理の方向性
A 3,000万円 150万円 2,850万円 2,600万円 通常売却で完済できる可能性を検討
B 3,000万円 150万円 2,850万円 2,900万円 50万円不足する仮定。自己資金を含めて個別確認
C 3,000万円 150万円 2,850万円 3,300万円 450万円不足する仮定。オーバーローンとして追加整理

仮定例の150万円を標準的な売却費用として扱うことはできません。実際の費用は、売買価格、物件条件、媒介契約、登記、金融機関の手続、税務関係などによって異なります。

 

比較結果は3段階で整理する

通常売却で完済できる可能性がある状態

想定成約価格から売却諸費用を差し引いた概算額が、完済必要額を上回る状態です。

ただし、想定成約価格で実際に成約することを保証するものではありません。売却予定日が決まった段階で、金融機関へ完済必要額と手続を再確認する必要があります。

 

完済できるかどうかの境界に近い状態

価格交渉、売却諸費用、完済日、査定価格の幅によって、不足額や余剰額が変わる状態です。

単一の査定価格だけで判断せず、複数の想定成約価格を使って資金計画を比較します。

 

不足が見込まれる状態

売却代金と準備可能な自己資金だけでは、完済必要額へ届かない可能性がある状態です。

不足が見込まれるという理由だけで、直ちに任意売却になるとは限りません。自己資金の準備可能性、金融機関への相談、他の売却条件などを追加で整理します。詳しい考え方は、第6章「オーバーローンの場合はどう考える?」で解説します。

 

家を売れば住宅ローンを完済できるか確認するための数字一覧

確認項目 確認する内容 主な確認先 未確認の場合
現在の残高 現時点の借入残高 借入先金融機関 推測しない
完済必要額 完済予定日時点の必要額 借入先金融機関 完済予定日を示して確認
査定価格 現時点の価格判断 不動産会社 物件調査を行う
想定成約価格 販売戦略上の想定価格幅 不動産会社 単一価格に固定しない
売却諸費用 個別案件で発生する費用 不動産会社・司法書士・金融機関・税務専門家等 項目ごとに確認
自己資金 不足時に準備可能な資金 売主本人 無理な資金調達を前提にしない

売却前チェック

  • 現在の住宅ローン残高を確認した

  • 売却予定日時点の完済必要額を確認した

  • 完済手続の申出期限を確認した

  • 査定価格と成約価格の違いを理解した

  • 購入価格を現在価格として扱っていない

  • 想定成約価格を複数の価格帯で比較した

  • 売却時に見込まれる諸費用を整理した

  • 不足が生じる場合に準備可能な自己資金を確認した

  • 税務・登記・金融機関の専門領域を分けた

  • 不足が見込まれるだけで任意売却と判断していない

 

よくある質問

Q.住宅ローン残高はどこで確認できますか?

返済予定表、残高証明書、金融機関の残高照会、契約者向けWebサービスなどで確認できる場合があります。確認方法は金融機関や融資商品によって異なるため、借入先へ確認してください。

 

Q.残高証明書の金額と売却時の完済必要額は同じですか?

一致するとは限りません。完済日までの利息や金融機関ごとの手続・費用などが関係する可能性があるため、完済予定日を示して借入先金融機関へ確認してください。

 

Q.査定価格が住宅ローン残高より高ければ完済できますか?

査定価格だけでは判断できません。実際の成約価格、売却諸費用、完済必要額を確認し、住宅ローン返済へ充当できる概算額と比較する必要があります。

 

Q.購入したときの価格は現在の売却価格の基準になりますか?

購入価格は参考情報の一つですが、現在の市場価格と同じではありません。現在の市況、物件状態、立地、周辺事例、競合物件などを基に個別査定を行います。

 

Q.査定価格・売出価格・成約価格は何が違いますか?

査定価格は不動産会社の価格判断、売出価格は売主が市場へ提示する募集価格、成約価格は売主と買主が合意した売買価格です。3つの価格が同額になるとは限りません。

 

Q.家を売るときに住宅ローン以外でどのような費用が必要ですか?

仲介手数料、印紙税、登記関係費用、金融機関の手続費用などが発生する可能性があります。物件によっては、測量、解体、残置物処分などの費用も検討が必要です。

 

Q.売却代金だけでは住宅ローン完済に足りない場合はどう考えますか?

不足額を確認し、準備可能な自己資金、金融機関への相談、売却方法などを追加で整理します。不足が生じるだけで任意売却になるとは断定できません。

 

 

 

 

 

関連記事

  • 第1章「住宅ローンの返済が苦しくなったら最初に何を確認する?」

  • 第2章「まだ滞納していなくても相談すべき?|早期相談の意味」

  • 第4章「まず金融機関へ相談する意味」

  • 第5章「通常売却で住宅ローン問題を整理できる場合とは?」

  • 第6章「オーバーローンの場合はどう考える?」

  • 第5弾「査定価格・売出価格・成約価格と販売戦略」

  • 第8弾「不動産売却の費用・税金・手取り額」

※公開時に実際の掲載ページへ内部リンクを設定してください。

 

 

 

株式会社陸自不動産へ相談できる内容

住宅ローン残高や売却予定日時点の完済必要額は、借入先金融機関へ確認します。自宅の現在の市場価格や販売可能性は、不動産会社による物件調査と査定が必要です。

株式会社陸自不動産では、大村市を中心とした不動産について、物件調査、価格査定、競合物件調査、想定成約価格の検討、売却諸費用の整理、販売戦略の作成などを支援します。

売却するか決まっていない段階でも、市場価格と住宅ローン残高を比較するための状況整理から相談できます。

 

 

免責事項

本記事は、住宅ローン返済と不動産売却に関する一般的な情報提供を目的としています。住宅ローン残高、完済必要額、繰上返済手続、手数料などは、借入先金融機関、融資商品、契約内容、完済日によって異なります。不動産の査定価格は成約価格を保証するものではありません。登記上の個別判断は司法書士等、税務上の個別判断は税理士・税務署等へ確認してください。具体的な売却可否や資金計画は、物件調査、金融機関への確認、個別費用の確認を行ったうえで判断する必要があります。

 

参考情報

 

執筆者情報

株式会社陸自不動産
代表取締役 小松野美貴哉
保有資格:宅地建物取引士・おうち売却の達人

大村市を中心に、不動産の価格査定、売却諸費用の整理、販売戦略、住宅ローンが残る不動産の売却可能性など、不動産売却に関する実務を支援しています。

 

 

 

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